2018/11/13

「働き方改革」が叫ばれる今こそ、副業やパラレルキャリア(複業)で可能性を最大限に活かせ

安倍内閣の政策の目玉のひとつであるのが、「働き方改革」です。70~80年代には高いパフォーマンスを保っていた労働生産性が、2000年代以降鈍化、G7で最下位に落ち込んでいるのがその背景にあります。[1]

 

残業時間の長さが時折問題視される一方で、それが生産性にあまり反映されていません。

 

働き方改革が意味すること

 

労働の生産性が低い?

まず定量的な指標から見ていきましょう。

日本の一人当たりの労働生産性は、実はG7で最下位の水準にあります。

 

ただし労働生産性は、日本だけではなくほかの先進国もその伸びが鈍化しています。。1995~2005年の労働生産性の平均伸び率を比較すると、日本だけでなく、アメリカやイギリスなども伸び悩んでいます。これが、労働生産性を改善すべきと議論される背景です。。

 

労働生産性の定義については、伊賀泰代氏の著書『生産性』のなかで述べられています。[2]

 

労働生産性=付加価値÷投入資源量

 

つまり日本の労働生産性が低いのは、投入資源量に見合った付加価値が諸外国と比べて高くないからです。

 

労働生産性を増やすには、労働の成果である「付加価値」を増やすか、従業員数や時間当たりの労働量を表す「投入資源量」を減らすしかありません。伊賀氏は同著で、付加価値を増やす、あるいは投入資源を減らすには、インプルーブメント(改善)かイノベーション(革新)を起こすしかないといいます。

 

イノベーションについては後述するとして、改善によって投入資源を削減する方法の一つに、労働時間を減らすことが挙げられます。これは、政府が推し進める働き方改革のなかにも盛り込まれています。端的にいうと短時間集中して働くほうが、ダラダラ長時間働くよりも1時間当たりの投入資源量が減少するということです。。つまり付加価値が同じであれば、投入資源が削減された分、労働生産性が上昇するということです。

 

政府が推奨する働き方改革の意義

国が推し進める働き方改革は、まさに労働生産性を上昇させる取り組みだといえます。

 

その一方で、政府が取りまとめた「働き方改革実行計画」には、副業を認めることも記載されています。[3]

副業を認めるということは、長時間労働の推奨、すなわち投入資源の増加を意味するために、労働生産性の向上とは逆行する動きに思われるかもしれません。

しかし、そこには企業の論理があります。たとえば、副業を認める企業のひとつであるヤフーは、

 

「社員が安全・安心・豊かさのもと、才能と情熱を解き放ち、世の中に貢献できる会社になる」を実現するため

 

と、副業を容認する目的を述べています。[4]

つまり、政府としては短時間の労働で高い生産性を実現してもらい、さらに余った時間で新しい技術の開発やオープンイノベーション、起業といったチャレンジを推奨しているのということです。

その政府の思惑と企業の思惑が一致し、副業が推奨されることになりました。

 

では実際に、企業が成長を期待する副業とは何なのか。具体的に見ていきましょう。

 

2つの「ふくぎょう」

 

働き方改革のキーワードのひとつ「ふくぎょう」

おや?そう感じた人もいるでしょう。あえて平仮名で記したのには理由があります。「ふくぎょう」には2つの意味があります。まず1つめは「副業」。企業に勤めながら、本業とは別に仕事を請け負うことです。

 

副業として文筆業に従事する楠木新氏というライターがいます。[5]
40代に休職したのち平社員に逆戻りしたため、その後のライフプランが見えなくなったといいます。

 

本業での限界を感じ、仕事のモチベーションを保つために始めたのが、フリーランスとしてのライター業です。「キャリアチェンジ」をテーマにし、社会のニーズに合わせようとしたと楠木氏はいいます。
楠木氏のような文筆業以外にも、副業にはネット販売、民泊などさまざまな業種が考えられます。

 

もう一つの「ふくぎょう」

「ふくぎょう」には本業以外の業務を請けもつ「副業」のほかに、複数の業種を並行する「複業」が挙げられます。副業ではなく複業と記す場合、どちらが本業か区別できないという意図が含まれます。[6]

 

楠木氏の場合、実は「副業」をいつか「複業」に育てることを意図してライター業を始めました。

つまり、最初は「副業」でも、いつか2つの本業をもつことを目標に、新しい働き方を見出したかったと回想しています。

 

その結果、企業の正社員として定年退職したのち、フリーランスのライターに仕事を完全にシフトできました。
これは、文筆業が「複業」、すなわち本業として確立されていたからにほかなりません。

 

結局、楠木氏はリストラされることなく企業での職務を全うできたわけですが、理想をいえば企業をリストラされた場合でも困らないもうひとつの「本業」をもつことが好ましいでしょう。
複業に従事することには、失業リスクの分散といったメリットもあります。

 

副業・複業がもたらすイノベーション

 

生産性を向上させるイノベーション

副業や複業のメリットがあるのは、ビジネスパーソンだけではありません。
企業にとってもメリットがあります。
そのキーワードとなるのが「イノベーション」です。伊賀氏の労働生産性の定義でも、付加価値の増大、あるいは投入資源量の減少をもたらすものとして、イノベーションが位置づけられていました。

 

では、労働生産性を向上させるイノベーションとはどのようなものでしょうか。

 

伊賀氏は、生産性を向上させるイノベーションには、技術的イノベーションと非技術的イノベーションの2種類があるといいます。
技術的イノベーションとは、AIやiPS細胞といった世の中を変えるであろう技術によって生じるものです。
これに対し非技術的イノベーションとは、「貨幣制度の確立」や「取引所の確立」といった経済的なイノベーションです。
ビジネスにおいて、非技術的イノベーションのほうがウェイトが高いと伊賀氏は述べています。
「貨幣制度の確立」の場合、物々交換では取引に時間がかかりすぎるだけでなく、価値を貯められないという非効率さがあります。
貨幣制度の導入により、物々交換の非効率さが解消されました。

 

ビジネスの現場での非技術的イノベーションを起こすためには、問題意識をもつこと、そして問題を解決する方法を何としてでも探ることが重要だと、『生産性』の中で語られています。

 

勘のいい方なら、副業によって非技術的イノベーションが起こりうるのではないかと思うでしょう。
その辺の事情についてみていきましょう。

 

企業側にとっても副業はメリット

企業が副業を認めるケースが多いのは、単に国が定める働き方改革に盛り込まれているからだけではなく、労働生産性を増やすイノベーションを起こしうるからです。

 

ロート製薬は、副業を積極的に認める企業です。[7][8]
同社が副業を認めるきっかけとなったのが、2016年に若手社員を中心に組織された「働き方プロジェクト」でした。
この中で社員たちは、自分たちがさらに成長するために副業を認めてほしいという提言を行います。

 

当時会長であった山田邦雄氏は、社員の立場と企業の立場の両面から検討しています。
まず社員の立場から見れば、終身雇用制に対する疑問があります。
企業が社員を縛りすぎることで、社員が内向きになり、時代の変化についていけなくなるのではという考えです。
社員の副業を認めることで、ロート製薬としては人材が流動する懸念もあります。
その一方で、中途採用を積極的に推し進めることで、バランスを取ろうとしました。

 

また楠木氏の例でもわかるように、副業が社員のモチベーションを向上させるといったメリットも期待できるでしょう。

もうひとつは、副業や複業がオープンイノベーションにつながる点です。
オープンイノベーションは、次のように定義されます[9]。

 

企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること

 

AIなどの登場により、企業経営を取り巻く環境はますます大きく変化しようとしています。

 

そのような時代にあっては、企業が持つ既存の技術や価値観だけでは、イノベーションを起こすことはできません。

つまり、副業がもたらす「時代を見る目」により、企業にイノベーションがもたらされる効果を期待しているということです。

その結果として副業が、労働生産性を上昇させる起爆剤になる可能性があると言えるでしょう。

 

まとめ

副業や複業はビジネスパーソンにとってメリットがあります。
楠木氏の例は40代という働き盛りの時期のケースですが、終身雇用制が崩壊した今、30代までのビジネスパーソンでも、モチベーションの維持や将来のリスクに備えると言う意味でとても大きなメリットがあります。

 

その一方で、企業にとっても副業によりビジネスパーソンが時代を見る目を身に着け、本業にイノベーションをもたらしうるとなれば、双方にとってWin-Winの関係を築けるでしょう。

 

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[1]生産性向上のための働き方改革https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/inv2017_03_01.pdf
[2] 『生産性』 (伊賀泰代 著)
[3] 働き方改革実行計画 (首相官邸)https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf
[4] 働き方の自由度を高める副業・兼業制度(労政時報 2017年12月22日号)
[5] 『「こころの定年」を乗り越えろ : 40歳からの「複業」のススメ』 楠木新 著
[6] 3銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22847550Y7A021C1EA3000/
[7] 『マルチプル・ワーカー「複業」の時代』山田英夫 著
[8] 対談 ロート製薬会長兼CEO 山田邦雄×東京大学大学院教授 柳川範之 ロート製薬 山田会長、どうして副業解禁したのですか? (週刊東洋経済 2016年10月19日号)
[9] 『マルチプル・ワーカー「複業」の時代』 63頁