2018/11/14

予算を立て、経営を管理する残念な会社とは。

多くの会社では、年度の始めに必ず予算を立て、そこから行動計画を立案し社員の行動目標に落とし込むことが一般的だ。

さらに、計画的なマネジメントを意識している社長さんであれば中期経営計画も立案し、3年程度先までの売上高や利益計画を立てていることもあるだろう。

そしてそれを元に、組織再編や従業員の採用計画などを進めていく。

銀行借り入れをしている会社や、外部株主のいる会社では、このような計画を立案することはなかば必須の作業とも言える。

上場企業であれば言わずもがなで、経営計画と実際の業績を予算・実績の差異として比較され、経営者の評価もそれで決定されるのがいわばマーケットのルールだ。

 

しかしこのような、現在では常識とされている経営手法は残念で的はずれなものであったとすれば、驚かれるのではないだろうか。

もちろん、このような考え方の全てが無意味というわけではない。

ただ、数字の設定の仕方と運用方法によっては、とんでもなく無意味な考え方になる、ということだ。

そして多くの会社では、その残念な手法に基づき予算管理経営が実践されている。

 

では、残念な予算管理経営とは一体どのようなものなのか。

そしてそれはなぜ残念なのか。

少し詳しく見ていきたい。

 

予算管理とはなにか

そもそもの考え方として、予算管理という考え方はいつどこで生まれたものなのか。

新たに生み出された考え方であれば、必ずニーズが存在したはずである。

そしてそのニーズは、現在の経営課題を解決する上で適切な手法であるのかを、最初に検証しなくてはならない。

 

その予算管理という概念。元々は、1920年代に考え出されたものとされる。

つまり、今からおおよそ100年前に生み出された考え方というわけだが、その先駆けとなったのはGM(ゼネラルモーターズ)、デュポン、シーメンスと言った欧米の大企業であった。

そして1920年代といえば、欧州を中心に激しい戦闘が繰り広げられた第1次世界大戦(1914~1918)が終結して間もなくの頃合いだ。

荒廃した国土を立て直すための供給力が大幅に不足し、重厚長大産業が次々に生産を拡大し、作れば作るだけ売れるという時代背景である。

さらにGMを例に取ると、モータリゼーションの拡大も無視できない。

ガソリン車が世に出始めたのは19世紀の末だったが、その後アメリカでは、1903年に初めてその生産台数が1万台の大台を突破する。

かと思えば、1909年には10倍以上となる12万台、さらに1920年には190万台余りに急増するなど、自動車産業と関連する産業の成長ぶりはまさに、現代のITを凌駕する勢いであった。

 

もはやおわかりだと思うが、予算管理経営とは、このような時代のニーズに応じる形で誕生した考え方であり、現代とはまるで違う要求に応じるものであったことを理解しなければならない。

いつの時代も、その時代に応じた難しい経営課題が存在するものではあるが、少なくとも当時は、マクロ経済の環境として、供給を上回る大きな需要が存在していたということだ。

 

このような時代にあっては、経営計画とは自然の成り行きとして、生産計画がその大きなウェイトを占めるようになるだろう。

そして、生産に必要な人員を計画的に採用し、生産を実現するための設備資金をどのように調達するのか、と言ったマネジメントが考え方の中心になる。

そしてその生産とは時間との勝負であり、より多くのシェアを奪うために同業他社よりも早く、そして良いものを作るのが経営者に課された至上命題であった。

 

言い換えればこれは、静的な経営目標だ。

期限を区切り、その時期までにどのように所定の生産量を達成するのか、といった動かない目標に向かい舵を切ることが経営者の手腕であった。

例えて言えば、今日の19:00に東京を出発し、明日の05:00までに札幌に到着するためにはどのように計画的に動けばよいか、といったものだろうか。

高速道路を使うのか、フェリーを利用するのかなど、そのメリットとデメリット、コストとの兼ね合いでもっとも望ましい方法は何かを検討する。

それぞれの局面で難しい判断が要求される事に変わりはないが、最終的なゴールは動かないので、経営目標の達成そのものの方向性がずれる恐れは少ない。

 

しかし、需要よりも圧倒的に多くの供給量がある現代の経営は全く違う。

顕在的な需要を満たすマーケットは、既に薄利多売で食い荒らされている。

潤沢な利益をもたらしてくれる桃源郷は、新しいマーケットの創造であり、潜在需要の掘り起こししか残されていないが、それは西遊記の冒険よりも困難な道のりだ。

そしてそのどちらも、3年後はもちろん、1年後の定量的な数字目標を立案することなど、ただの数字遊び過ぎない。

なぜか。

 

新しいマーケットは未開のフロンティアであり、誰も経験したことがない世界なので論を待たないだろう。

顕在的なマーケットでは、そのマーケット規模は概して大きく成長することはないが、外部環境の変化によって需要の質は大きく変わり、また業界によっては極端にシュリンクすることもある。

どれほどの生活必需品であっても、リーマンショックの影響は避けようがない。

クオリティよりもプライスに嗜好が大きく変化するように、顕在的なマーケットで勝負する企業の売上は、自社の努力とは全く無関係なところで土台が破壊されることもある、ということだ。

そして「リーマンショックは特別」と言ったところで、ファンダメンタルズの予想を越える変動は確実に毎年発生する。

足元の2018年でも、関空が水没し閉鎖されれば、インバウンドに頼る観光業は何をどうしたところで売上目標を達成する方法などない。

北海道地震の影響による宿泊施設のキャンセルは、想像以上の規模と地域に広がり、地域経済に大打撃を与えた。

いずれも、一商店一企業の目標予算など、ファンダメンタルズの変化の前には全く為す術を持たないことを、如実に表している。

 

では、このような事実から導き出される結論は、「予算管理など全く意味がない経営手法」という元も子もない結論でしか無いのだろうか。

 

「脱・予算経営」という考え方

そもそも、予算の立案は非常に大きな労力と多大なコストがかかる作業だ。

零細企業であれば、代表者の貴重な時間を何時間も費やすことになる。

上場企業であれば、予実管理(予算と実績の管理)に専門チームが組織されており、多くの場合そのトップは経営企画系の役員で、チームにかかるコストは時に億を越えるだろう。

そのような労苦の成果が、自社にはどうすることもできないファンダメンタルズの変化でひっくり返されるのだから、100年もの間、疑問に思わなかった経営者がいないはずがないと思われないだろうか。

 

そして、その結果生まれた考え方の一つが、「脱予算経営」という考え方だ。

元々は、アメリカの会計士であるジェレミー・ホープ氏と、マネジメントコンサルタントであるロビン・フレーザー氏が1998年に著書として発表したことで、広く認知されることになった。

日本には2005年、早稲田大学大学院教授である清水孝氏が原著を翻訳し、出版したことでわずかながら、広まりを見せている。

要旨、環境の変化を有効に反映させた経営目標を立案することを説く本であり、目標は静的なものではなく動的なものとしなければならないとする。

例えば、自社内の支店同士を比較対象に予算を編成する、あるいは同業他社の数字を元に目標を立てると言った具合だ。

 

ただ、この著書に限って言えば、要旨には賛同できるものの、それに変わる仕組みが具体的に提起されているわけではない。

また原題である「Beyond Budgeting」も、脱予算経営と訳すよりは「予算経営の次に来るもの」と言ったニュアンスだろう。

具体的な経営手法の提起の乏しさから、日本では大きな支持を受けるには至らなかった印象がある。

 

ただ、それも無理はない話だろう。

脱予算経営の本質的な問題提起は、全ての業種・全ての成長ステージにあてはまるような経営管理の方法など無い、という趣旨であるように思われる。

先述のように、成熟しているマーケットで戦う企業と、新たに生まれようとしているマーケットで戦う企業の両方に適用できる、予算管理の手法など、存在し得るはずがない。

 

予算管理の最終的な目的は、中長期的に安定した利益を上げ続ける組織を作ることであり、そこからブレイクダウンとした幹部以下全社員の具体的な行動計画であるはずだ。

であれば、具体的な行動計画に落とせる客観的な経営目標であれば極論、それは何でも良いことになる。

そしてそれは、環境の変化やファンダメンタルズの変化を織り込めるはずがない、単純な定量的予算管理手法でないことは明らかだ。

前提が大きく変わっているにもかかわらず、与えられた数字を必ず達成しろと社員を追い込む行為は、時代遅れのブラック企業と言わざるを得ない。

このような予算管理経営は、予算管理という名のパワハラであって、経営者に経営者である価値はない残念な会社と言って差し支えないだろう。

 

ぜひ、自社にとっての「Beyond Budgeting」とは何であるのか。

予算管理経営の次に来る有効な施策は何であるのかを、役員とともに考えるきっかけにして貰えれば幸いだ。

 

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