2018/11/21

「社外留職」「社内複業」働き方改革に期待できるメリットと課題とは?

政府主導で進む「働き方改革」。この流れに乗って、社内の働き方を変えようとしている企業も少なくありません。パナソニックもその一つで、同社は2018年6月29日、新たに創設した「社外留職」「社内複業」という2つの新しい働き方制度について記者向け説明会を開きました。ここでは、従業員に「留職」「複業」という働き方の選択肢を与えるメリットとデメリット、そしてマネジメント上の問題と対策について解説します。

 

パナソニックの「社外留職」「社内複業」

パナソニックが新たに採用した2つの制度のうち、「社外留職」とは従業員が他社に籍を移し、パナソニックでは経験できないような仕事を通じて、新たなスキルを身に付けてもらうものです。想定されている期間は1ヵ月〜1年程度。初年度は5名程度を公募する予定です。

 

じっくりと経験を積ませて人材を育成するパナソニックと比べ、ベンチャー企業の仕事のスピード感は非常に速いものです。「社外留職」でパナソニックではできない経験を積ませる意図です。

 

一方「社内複業」とは所属している部署に籍を置きながら、同時に別の部署にも所属して仕事をするものです。期間は社外留職と同様1ヵ月〜1年で、他部署で仕事する比率は最大50%になるよう調整されます。自分の部署の仕事しか知らない「専門馬鹿」の状態から抜け出し、自己成長してコラボレーションを生み出すのが目的です。

 

例えば営業職の人間が営業事務の部署で社内複業に取り組めば、今まで当たり前のようにサポートしてもらっていた仕事がどんな手順で、どれだけの労力をかけていたものかを理解できます。すると社内副業期間が終わった後も、相手の仕事内容を理解した上で依頼できますし、他部署の仕事内容を同じ営業の人間に伝えられるのです。

 

パナソニックは以前から出向や社内で職業を兼務させることはありました。これを社員の希望をもとに実施できるようにしたのが今回の2つの制度なのです。この2制度を導入しているのは同社だけではありません。以下では具体的な企業名も挙げつつ、この2つの働き方制度について解説します。

 

「留職」「複業」とは何か?

 

他社やNPOに一定期間所属する「留職」

そもそも「留職」は、「留学」をもじった造語で、海外企業、団体に一定期間赴任することを指します。日本ではNPOクロスフィールズが2011年5月から「留職プログラム」という事業を展開しており、同団体のプログラムを日本で初めて取り入れたのがパナソニックです。

 

同社は2012年2月に「Panasonic Innovation Volunteer Team(PIVoT)」を組んで、ベトナムのNGOに入社10年目の従業員を送り込み、NGOとともに太陽光で調理ができる製品「ソーラークッカー」の開発をサポートしました。
当初はコスト面で問題のある製品でしたが、派遣された従業員はNGO職員や日本のパナソニック開発チームと密に連携を取り、最終的には見事16%の製造コスト削減に成功。現地NGOへの貢献はもちろん、留職した従業員にとっても、日本の開発チームにとっても、大きな成長と刺激をもたらしたそうです。

 

パナソニック以降、2018年7月に至るまでに、グローバルリーダーの育成などを目的に日立製作所やハウス食品、NECなども留職プログラムを導入しました。

 

他社やNPOと自社に同時に所属する「複業」

「副業」は本業だけでは足りない収入を補うためにするものです。これに対して「複業」は本業で得た経験やスキルを活用して、キャリア形成を目的とします。

 

こうした働き方がフォーカスされるようになったのには、日本全体の労働力不足が影響しています。根底にあるのは2つの考え方です。
一つは少子高齢化が進み労働人口が減少していく中で、一つの会社が一人のスキルを独占しているのは、社会損失になるという考え方です。
もう一つは経済成長が鈍化していく中で、企業の中で従業員が活躍できる場が少なく、企業が個人の成長の妨げになっているという考え方です。

 

複業を導入すれば一人のスキルが複数の企業でシェアされる上、より多くの活躍の場が与えられます。現時点では「副業禁止」を就業規則などに盛り込む企業が多いものの、少子高齢化の進行を考えると、複業推奨の動きは今後広がっていくと考えられます。

 

現時点で複業を推奨している企業としては、「スタイルストア」「COCOMO」といったショッピング事業などを展開するエンファクトリーや、サイボウズ株式会社、フリーマーケットサービスを運営するメルカリなどが挙げられます。

 

マネジメント目線で考える「留職」の効果と課題

 

しっかり時間を使って「社外の価値観」を学ばせられる

以下ではここまでの内容を踏まえ、マネジメントの目線から留職と複業が持つ効果と課題を解説します。まずは留職の効果についてですが、これには主に以下の3つの効果が期待できます。

 

・ どっぷり「社外」に浸かることで人材が育つ
・ 自社では提供できない「成長の場」を与えられる
・ 従業員が留職経験者から刺激を受ける

 

▼ どっぷり「社外」に浸かることで人材が育つ

留職が複業と大きく違うのは「二足のわらじ」にならない点です。確かに会社から命じられて、もしくは許可されて留職するのですから、厳密に言えば二足のわらじを履いています。しかし会社と留職先の仕事を並行させるわけではないので、少なくとも留職中は海外企業や現地の団体、もしくは国内の他社の働き方を学ぶことができます。これにより集中して学習し、経験を積めるのです。特に海外へ留職した場合は、グローバルリーダーとしての成長も期待できるでしょう。

 

▼ 自社では提供できない「成長の場」を与えられる

前述したように、現在日本の経済成長は鈍化しています。事業縮小を余儀なくされている企業も少なくありません。そのような状況にある企業の従業員の成長が必要ですが、事業を縮小しているような状況では従業員の「成長の場」には限りがあります。しかし経済成長が顕著な東南アジア諸国などでは、いくらでも成長の場があります。

 

▼ 社内が留職者から刺激を受ける

留職者と連携をとったり、留職者が戻ってきてから一緒に仕事をしたりすることで、会社に好影響を及ぼす可能性もあります。パナソニックの留職プロジェクトでは、留職者と連携していた日本のリモートチームが、留職終了後もチームとして社内で新企画を提案しています。

 

留職から戻ってきたあとのフォローが課題

一方で留職を導入する際にマネジメント側が注意するべきは「行っただけで終わってしまう」「染まってきただけで終わってしまう」の2点です。

 

前者については留職中に定期的に報告書を書かせ、戻ってきた後にその経験をどう生かしていくのかをプレゼンさせるなど、留職先での経験を学びと実践に移す仕掛けが必要です。

 

後者に関しては「留職先ではこうだった。うちも同じようにするべきだ」などと言い始めると、会社のやり方に異議を唱える人間が増える可能性があります。もちろん建設的な意見は取り入れるべきですが、かといって頼んでもいない業務改革をむやみに受け入れるべきではありません。

 

「染まってきただけで終わってしまう」ことを防ぐためには、留職経験者の上司が自分の部下に、自分が何を求めているのか、留職の経験を生かしてどんな仕事に取り組んでほしいのかをはっきりと示し、部下にそれを実行させるよう徹底する必要があります。決定・評価をするのは上司の仕事、上司に求められていることで結果を出すのが部下の仕事です。留職経験者の上司は留職経験前から、本人にこの原則をしっかりと理解させ、そのうえで留職に送り出す必要があります。

 

マネジメント目線で考える「複業」の効果と課題

 

生産性向上につながる

複業の効果は、基本的には留職と同じです。しかし複業は同時に他社や他部署などに所属することになるため、期待できる効果は少し変わってきます。

 

最大のメリットは生産性の向上です。複数の組織で同時並行で仕事をこなすためには、仕事に優先順位をつけ、かつ成果を出さなければなりません。複業を成立させるためには、本人が生産性を向上させる必要があるのです。個人のパフォーマンスが上がるとチームのパフォーマンス向上にもつながります。

 

現時点の働き方改革では、生産性向上のために「残業禁止」を掲げがちですが、これは従業員にとってみれば「残業代だけ給料が安くなる」というデメリットにもなりかねません。複業を取り入れれば従業員自身にもメリットがあります。より効果的に生産性を向上させることができるはずです。

 

課題は「指示系統の混乱」

一方、複業を導入する際の課題は、仕事を同時並行にすることで指示系統が混乱しやすいという点です。社外での複業であれば、従業員の上司も別の組織の人間なので、本人が仕事の区別をできていれば問題ありません。しかしパナソニックのように社内での複業を行う場合は、「別部署の上長が従業員の仕事に口を出す」という状況が起きやすくなります。

 

このように「自分に指示をする上司が2人以上いる」状況になると、部下はいずれかの上司の指示を優先する必要が出てきます。いずれかの上司の指示を優先するということは、部下は「いずれかの上司が正しく、いずれかの上司が間違っている」と上司を評価するということです。

 

これは上司と部下の関係としてあってはならない状況です。なぜなら評価するのは上司の仕事であって、部下の仕事ではないからです。部下が上司を評価するようになると、上司の指示は間違っているから従わない可能性もあります。これでは組織が機能を失ってしまいます。

 

とはいえ社内での複業の場合は、上司が2人以上になります。この状況で部下に上司を評価させないようにするには、それぞれの上司に自分の仕事が「目標を与え、評価されるのは結果」であることを理解させる必要があります。

 

なぜなら別部署の仕事にまで口を出そうとするのは、結果だけではなく仕事のプロセスまで管理しようとしているからです。「適切な目標を与えたら、結果が出るまでのプロセスは基本的に部下に一任する」という姿勢であれば、別部署の仕事に口出ししようとはしません。

 

 

「留職」「複業」はうまく活用しよう

パナソニックのような「留職」「複業」という働き方には従業員側、マネジメント側双方にメリットがあります。しかし何も考えずに導入してしまうと、無駄に終わってしまったり、かえって社内に混乱を引き起こすリスクもあります。導入を検討する際は、ここで解説した課題があることを理解し、あらかじめ対策を講じた上で導入しましょう。

 

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