2019/02/01

英語のmanagement と日本語のマネジメントは、意味が違う

英語のマネジメント(management)は、「管理」と訳されます。

したがって、マネジメントと管理は同じものと考えられがちですが、「両者を同じものと考えるとチームの統治がうまくいかなくなる」と指摘するコンサルタントは少なくありません。

マネジメントの目的は「成果を引き出す」ことであり、管理職が本来行うべき業務です。一方の管理の目的は「制御すること」であり、こちらも確かに管理職の業務ですが、優先度はマネジメントより劣ります[1]。

現代の管理職には、従来の日本式の管理のみを重視する姿勢をあらため、マネジメント力を身につけることが求められています。

 

ではなぜ、これまでは管理で会社がうまく回っていたのか

マネジメント力の重要性はゆるぎないものといえますが、だからといって日本式の管理が不要なわけではありません。管理職に就いている人は、管理を捨ててマネジメントを獲得するのではなく、管理スキルの上にマネジメントスキルを加えることを考えたほうがよいでしょう。

なぜなら日本式管理は、日本経済をここまで押し上げた要因のひとつだからです。

 

管理は不要なのではなく、重視しすぎないようにしたい

日本式管理には次の3つの長所があります[1]。

・異常の予防
・失敗の禁止
・平穏の尊重

 

日本のモノづくりの現場では、「異常をとことん排除する」ことに努めてきました。労働者の均質化もそのひとつです。工場作業員は会社が支給する作業服の着用が義務付けられ、「同じことをする」ことが正しいとされてきました。もちろん作業員には創意工夫も求められましたが、それすらQC活動という会社が命じる業務のなかで成し遂げなければならないのです[2]。

異常の予防に努めた結果、メード・イン・ジャパンは自動車でも家電でも「壊れない」という評判を獲得でき世界中で大ヒットとなったのです。

 

また従来の管理職たちは、部下たちの失敗を厳しく叱責してきました。失敗から学ぶ姿勢を許容することよりも、「こうすれば失敗しない。だからこのように進めなさい」という指導を優先してきたのです。

この「失敗禁止」の考え方は、前例主義に通ずるものがあります。仕事を前例どおりに進めることは、業務の効率化をもたらします。誰もやったことがない仕事より、誰かがやって成功したことを繰り返したほうが楽に仕事を進められるからです。

高度経済成長期のように正しい方法から逸脱しなければ利益があがる時代は、前例主義こそ最良の管理手法でした。

 

そしてかつての管理職たちは、職場の平穏を尊びました。管理職は、労働組合と協調し経営者に根回しすることが求められました。軋轢が生じない平穏な職場では、経営方針を全従業員に浸透させやすくなります。さらに企業全体が同じ方向を向いているので強みを発揮しやすいのです。

日産自動車の会長であるカルロス・ゴーン氏が「私は根回しの大切さをわかっている」と発言するなど、日本式管理の有効性は証明されています[3]。

 

この「異常の予防」「失敗の禁止」「平穏の尊重」の3つの管理方法は、いまだに日本人労働者の気質になじむものといえます。

ただし、この3つの管理方法「のみで」管理業務を遂行することは避けるべきです。なぜならこの3つの管理方法は多くの失敗も生んできたからです。例えば失敗禁止の風潮はその後、パワハラという大きな社会問題になってしまいました。

 

【事例】ダメな管理が会社をダメにした

先ほど、「日本式の管理も、日本経済をここまで押し上げた要因のひとつである」と紹介しました。しかし経済のグローバル化によって、さまざまな「日本式」をあらためなければならない状況になり、それは日本式管理も例外ではありませんでした。

ダメな管理が社員をダメにした事例を紹介します。

 

早稲田大学アジア研究機構教授の戸崎肇氏は、2010年に会社更生法の適用を申請したJALの破綻要因は、「脆弱な企業体質が長年にわたって形成されてきたこと」であると述べています[4]。

具体的には、かつてのJALには次のような弊害がありました。

・効率の悪い大型ジェット機を購入し続けた
・採算の見通しが立たないままホテルや関連企業への大型投資を続けた
・放漫経営
・複数の労働組合が存在し経営判断を困難にした

 

これらはいずれも、日本式管理との類似性がみられます。効率が悪いとわかっていても前例があるから大型ジェット機を買い続けたのです。平穏主義が事なかれ主義を生み、ホテルへの大型投資に「待った」がかからなかったのです。

 

つまりダメな日本式管理はダメな日本式経営と密接にかかわっていて、その「ダメさ加減」は世界第3位の経済大国のトップの航空会社をも破綻させるのです。

 

マネジメントの本質とは

それでは現代の日本の管理職に求められるマネジメントとは、どのようなものなのでしょうか。「マネジメントをしている管理職」と認められるには、以下の4項目を実行しなければなりません[5]。

・部下の意欲を引き出す
・チーム全員に目標を与える
・精神的なサポートを含め部下を指導する
・部下と意思疎通を図り定期的にフィードバックを行う

 

押しつけず、自主自律を求め、個性を重視する

マネジメントには「押しつける」要素はありません。それが日本式管理と大きく異なる点です。

マネジメントには、部下をビジネスパーソンとして同等に扱う思想がうかがえます。例えば「部下の意欲を引き出す」ことが管理職の仕事になっているということは、部下に意欲がみられない場合、それは管理職の責任でもあるのです。マネジメントでは、実績が出せないことを部下だけに押しつけることはありません。

 

「チーム全員に目標を与える」仕事も、日本式管理とはずいぶん異なります。目標を与えるということは、目標に達するまでの過程は部下本人に考えさせることでもあります。つまりマネージャーは部下に自主自律を求めるのです。

一方の日本式管理では、部下たちが前例から逸脱しないように見張ることになるので、部下は自主自律を働かせることはありません。

 

「精神的なサポートを含め部下を指導する」仕事は、職場のストレスやメンタルの病気を予防する狙いがあります。部下はロボットではないので、気分の浮き沈みがあります。また得手不得手もあります。部下1人ひとりの特性を考慮せず仕事をさせることは、マネジメントの考え方からするとナンセンスです。

また、部下の気分の浮き沈みや得手不得手を考慮して仕事の割り振りができない管理職は、マネジメントができていないことになります。

 

「部下と意思疎通を図り定期的にフィードバックを行う」ためには、マネージャーは部下とコミュニケーションを取っていかなければなりません。しかもそのコミュニケーション方法は、飲み会を重ねればよいといった単純かつ精神論的な方法ではなく、フィードバックをするという高度で生産性を高める方法でなければならないのです。

 

管理職と部下の双方にほどよい緊張感が生まれる

極論すれば、部下が自分の職場を「働きにくい」と感じたら、それは管理職がマネジメント業務を果たしていないことになります。

しかしこのことは、管理職に「部下の下手に出ること」を命じているわけではありません。むしろその逆で、管理職がマネジメント業務を実施するには、日本式管理より厳しく部下たちを監視しなければなりません。

例えば、チーム全員に目標を与えるマネジメント業務ですが、目標が合理的であり、部下にその目標を達成するスキルがあるにもかかわらず成功しなければ、管理職はその部下を厳しくジャッジしなければなりません。

管理職はその部下をプロジェクトチームのリーダーから外したり、降格させたり、ときにはより重要度が低い部署に異動させなければなりません。

管理職がこうした行動に出れば、職場内に緊張感が生まれます。

そして管理職が部下に示した目標が、合理的かつ達成する可能性が高い内容であれば、管理職の厳しいジャッジが「恐怖政治」を生むことはありません。

 

【事例】マネジメント手法を変えて業績が伸びたタニタ

健康測定器具メーカーのタニタは、いまでは健康食を提供する定食屋「タニタ食堂」のほうが有名になっているほどです。同社が考案した健康メニューを掲載した料理本は累計500万部を超えます。

また「健康プログラム」を自治体や企業に販売するビジネスも好調です。

 

そのタニタを率いる谷田千里社長は、次のようなマネジメント方針を持っています(*6)。

・楽する方法を考えさせる
・「去年と同じやり方」を疑う
・チャレンジする姿を見せて巻き込む

 

谷田社長が社員に「楽する方法を考えさせる」ようにしているのは、そのほうが必死になって働くからです。

例えば発注作業は、「発注書を確認し→センターに発注して→在庫を確認して→発送の手配をする」という業務が必要になります。

しかし「楽をしたい」と考える人は、ワンクリックで終わるシステムをつくれないか、と発想します。

 

そして谷田社長は、社内を回って不具合を発見すると、担当者に「去年と同じやり方をしているからではないのか?」と尋ねるようにしているそうです。つまり今年は違うやり方を試すよう促すのです。谷田社長はこの作業を「不具合の芋掘り」と名づけています。

しかし谷田社長が手伝うのは「掘り下げること」だけで、修正は現場に任せます。そして時折フォローアップをしながら進捗状況を見守ります。

 

「チャレンジする姿を見せて巻き込む」方法で、タニタ食堂が生まれました。谷田社長がタニタ食堂の企画を打ち出した当初は、社内から大反対されました。

それでも実行に移し、新規事業を立ち上げただけでなく、企業イメージの向上にも成功したのです。

谷田社長はやる気のある若い社員を見つけると、自身の秘書などに据え、どんどん権限を与えて実行させています。

また谷田社長は管理職たちに「できない部下を批判するのではなく、指導方法を見直すように」言っています。

 

谷田社長は、先ほど紹介した以下のマネジメント方法のすべてを実行していることがわかります。

・部下の意欲を引き出す
・チーム全員に目標を与える
・精神的なサポートを含め部下を指導する
・部下と意思疎通を図り定期的にフィードバックを行う

 

しかし谷田社長は、社長に就任した当初は「ガンガン引っ張っていく」方式を採用していました。典型的な「悪いトップダウン」です。ところが2年目に肺炎で倒れてしまいました。

そのとき「なんでも自分でコントロールできるわけじゃない」と気がついたのです。

社長自身がダメな管理方法をよいマネジメントに切り替えたことが、今日のタニタを築いたといえます。

 

まとめ~マネジメントは日本式管理を否定しない

いわゆる「マネジメント術のテキスト」のなかには、マネジメントの重要性を強調するために日本式管理を否定的に書いてあるものもあります[7]。しかし日本式管理には、いまだに活用できる要素があります。欧米のビジネスを真似るために、日本の商売を否定する必要はありません[8]。例えば「抹茶味のスイーツ」は、洋菓子に和テイストをトッピングしたことで、日本人も外国人も好む味ができあがりました。

そしてマネジメントは、日本式管理も許容していると考えるべきでしょう。もし自主自律の精神に乏しい部下がいたら、とりあえず仕事を覚えるまで徹底管理の日本式管理で指導したほうが早く成長できるかもしれないからです。

 

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参照

[1]管理とマネジメントの違い(大杖正信)https://achievement-hrs.co.jp/motivation/vol75/
[2]効果の出る正しい改善活動、QCサークル活動の進め方https://news.aperza.jp/%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%AE%E5%87%BA%E3%82%8B%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E6%94%B9%E5%96%84%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%80%81qc%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AE%E9%80%B2%E3%82%81/
[3]ルノーのゴーンCEO「最悪に備え」無秩序な英EU離脱の場合で言及https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36031580S8A001C1000000/
[4]再上場JAL、破綻から再生に至る道のり(戸崎肇)https://www.nippon.com/ja/currents/d00051/
[5]マネジメントとは何か?管理職が担うマネージャーの役割と仕事内容https://www.recruit-ms.co.jp/open-course/live/0000000080.html
[6]「怠け者の方がよく働く」 タニタ社長の人材育成https://style.nikkei.com/article/DGXMZO23938480X21C17A1000000?channel=DF180320167066
[7]マネジメントは管理とは異なるhttps://tech.nikkeibp.co.jp/it/free/ITPro/yajima/20040507/143898/
[8]資本主義の未来(5)日本型制度の強み生かせ(S・ヴォーゲル カリフォルニア大学バークレー校教授)https://www.nikkei.com/article/DGXKZO34002030Z00C18A8KE8000/