2019/02/15

ジョン・コッターに学ぶ変革時代で生き残るためのリーダーシップ

ジョン・コッターという人物をご存じですか?ハーバードビジネススクールの名誉教授である彼は、リーダーシップ論の権威として世界的な支持を獲得しており、数多くの経営者がその理論を勉強し実践に役立てています。

 

今回は、ジョン・コッターの著書「リーダーシップ論」を参考に、変革期におけるリーダーシップの在り方や取るべき行動について解説します。社会が目まぐるしく変化する現代では大いに参考となるでしょう。

 

リーダーシップとマネジメントの違いとは?

ジョン・コッターは、マネジャーに求められる「リーダーシップ」と「マネジメント」という2つの要素について、その目的も求められる役割も明確な違いがあると論じています。真の意味でシーダーシップを発揮するためには、2つの意味についてしっかりと把握しておく必要があります[1]。

 

リーダーシップは変革をもたらす

リーダーシップは、大きな変革を生み出す、あるいは変化に対処する際に必要となります。行く先が見えない中で進むべき未来と方向性を定め、ビジョンと戦略を描くことがリーダーシップの役割です。戦略にふさわしい人員の結集や課題を解決するための社員への動機づけなど、人間関係の面に強く訴えかけ人心を統合する役目も求められます。総じて、客観的な数値として表しにくい仕事となるのがリーダーシップの特徴です。ビジョンを策定したり人を動かしたりするためには、冷静さよりも情熱が求められるでしょう。

 

マネジメントは既存システムの維持に役立つ

一方マネジメントは、既存のシステムを動かし続ける、あるいは複雑な問題に対処する際に必要とされます。求められる仕事は、計画と予算の策定、組織編成、人員配置、統制上の問題解決など事務的なものです。リーダーシップよりもデータに落とし込みやすい仕事が主なものとなり、業務に当たる際には冷静さが求められます。

 

リーダーシップが必要とされる高速化社会

今より世の中の変化がゆっくりだった時代、マネジャーには既存の組織やシステムを円滑に運営するためのマネジメント要素が強く求められていました。もちろんリーダーシップ的役割も必要でしたが、ウェイトはそれほど大きくなかったでしょう。しかし、情報通信技術や輸送網が高度に発達した現代では、社会は目まぐるしく変化し、商品やサービスのサイクルも高速化しています。このような環境で生き残るため、企業は絶えず変革し続ける必要があります。マネジャーについても、変化に対処し、変革を起こすためのリーダーシップがより強く求められるようになっているのです。

 

 

真の組織変革へ至るための8つのプロセス

では、リーダーが変革を起こすためにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。コッターは、企業が本当の意味で組織改革を果たすには8つのプロセスを踏襲する必要があると唱えました。プロセスの内どれか一つを飛ばしても、また中途半端なまま次の段階へ進んでも決して上手くいくことはありません。改革のスピードを強引に上げることで短期的には成功しても、改革の風潮が定着することはなく、組織内で軋轢が生まれてしまうからです。

 

①社員に危機意識を持たせる

変革のためには、まずその必要性を周知・浸透させる必要があります。つまり、社員に危機感を持たせる必要があるのです。とはいえ、危機意識を持つのは簡単なことではありません。ただひたすら「このままでは危ない」と主張するだけでは意識を変えることは難しいでしょう。ですから危機感を抱くに十分なデータを主張の根拠として提示することが大切です。

 

たとえば、下降している製品の売上データを共有する、あるいは満足度調査を行って徐々に顧客の関心が離れている事実を示すなどが挙げられます。競合相手の成長速度を提示するのも良いでしょう。その上で、「そのまま成り行きに任せたらどうなってしまうか?」を考え、意見を交わすと危機意識が醸成されていきます[2]。目安として、コッターの経験によると経営幹部の75%以上が先行きに危機感を感じる状態でなければ、十分だとは言えないようです。

 

②変革を遂行する強力なチームをつくる

企業内に十分な危機意識が生まれたら、次に強力な変革推進チームを作ります。チームメンバーには優秀で力のある人物を集めます。ここでつまずく可能性があるとすれば、企業内で十分に危機意識が広まっていないか、あるいは主導者にリーダーシップが備わっていない場合です。前者の場合は再度ステップ1に立ち戻り危機意識の醸成に努めましょう。後者の場合は舵を切る人間がリーダーシップに優れた者か、マネジメントタイプではないか検証する必要があります。リーダーシップの検証や養成を図るには、後述する優れたリーダーの行動パターンが参考になるでしょう。

 

③ふさわしいビジョンを定める

変革推進チームができたら、チームで変革のビジョンと戦略を立てます。ここで難しいのは、いかに適切なビジョンを見出すかという点です。ビジョンを描く上で大切なのは、革新的で遠大な目標を設定することではありません。利害関係者にとって有益か、そして現実的な戦略を策定できるかという点が大切です。かつてスカンジナビア航空が定めたビジョンは、「利用頻度の高いビジネス顧客にとって世界最高の航空会社になろう」という業界では誰もが思いつくものでした。しかし、この現実的かつ高収益を望むビジョンが功を奏し、成功を収めることができたのです。

また、誰もが共有できるようシンプルな言葉にまとめることも必要です。目安として、5分以内に説明できて理解を得られるビジョンでないとこのプロセスが完了したとは言い難いでしょう。

 

④ビジョンを組織全体に周知する

変革のためのビジョンと戦略が決まったら、企業内に周知徹底していきます。このステップで手間取るとすれば、それは絶対的なコミュニケーション不足に原因があります。優れたリーダーはあらゆる手段でビジョンの普及を図ります。日常的な会話はもちろん、社内報でビジョンを共有したり、定例会議のメイン議題をビジョンについての議論としたり、管理者研修のメインテーマをビジョンにしたりと思いつく限りの機会を利用してビジョンの周知に努めてください。何度も触れる機会があれば、自ずと従業員の記憶にもビジョンが刷り込まれていくでしょう。

 

⑤社員に変革のための機会と権限を与える

危機意識とビジョンが浸透していけば、自ずと改革のためのアイデアや行動が社員の方から湧き起こってきます。この変革の芽を摘んでしまうことのないよう阻害要因の排除や制度や組織の変更を行っていきましょう。障害の例としては、

 

・職務権限が細分化されているためにやりたくても実行に移す権限がない

・社内査定の基準と相反しているので動き出したくても二の足を踏んでしまう

 

などが考えられます。改革に歯止めを欠けるような従来の社内規則に関しては随時修正を加えていく必要があります。

 

⑥小さな成果を実現して信頼を得る

変革には時間がかかるとはいえ、長期間にわたって成果が見えないと組織内の意欲低下をもたらします。これを防ぐには、変革の意義を感じられるよう短期的な計画を設定して、小さな成果を挙げていくことが効果的です。成果に貢献した従業員に対して報償を与えることも積極的に行います。成果の内容は、新製品の成功、市場シェアの拡大、顧客満足度の向上など何でも構いません。小さくても高確率で成果の出せるプロジェクトを始められないか、組織のリソースから考えてみるようにしましょう。

 

⑦さらに難しい課題に取り組む

短期的な成果によって勢いを維持できたら、さらにビジョンに合った変革プロジェクトを成功させます。ここで気を付けなければならないのは、目に見える形で業績などが改善されたからといって、組織変革が成功したと早期に判断しないことです。一度、勝利宣言を出してしまうと関係者の緊張が緩み、再度動き出すことが難しくなります。大切なのは勝利宣言をすることではなく、成果によって得た信頼を追い風にさらなる改革に取り組むことです。

 

⑧変革を文化として根付かせる

変革によって実現した新しい方法と企業の発展の関連性を明確化して、変革の動きを企業文化として定着させます。そのためには、会議の場で業績と改革の関連性をしっかりと話し合う、社内報などで改革に応じて業績が上がったことをしっかりとアピールするなどの取り組みが肝心です。また、経営者や幹部など影響力の高いポジションに新たに就く人間に対しては、特に改革の意識が根付いているかチェックが必要です。リーダー次第では、変革の炎が瞬く間に沈下されてしまう可能性があるからです。

 

優れたリーダーに共通する12の行動パターン

組織改革のプロセスについてご説明しましたが、どのようなリーダーであればこの改革をスムーズに進めることができるのでしょうか。コッターが9社15人の優れたビジネスリーダー達を徹底的に調査したところ、12の行動パターンが見つかりました。その内容は以下のとおりです。

 

①1人の時間が極端に少なく、就業中に1人でいるのは在宅作業か移動時が大半
②会社内外を問わずたくさんの人と時間を過ごしている
③議論のテーマが多岐にわたり、ビジネスと関係のない話題でも話し合う
④たくさん質問する
⑤会話の最中に重大な意思決定を下すことは殆どない
⑥冗談を言うことが少なくなく、仕事と無関係な話題も多い
⑦誰かと話す時、事業や自社にとって重要でないと思われる話題も多い
⑧誰かと話す時、ビジネスリーダーとして相手に指示を出すことは殆どない
⑨具体的な指示はせずとも、質問したり、頼んだり、説得したりして影響力を行使する
⑩他人のやっていることに首を突っ込む
⑪時間の大半が、誰かとちょっとした会話を交わすことに費やされている
⑫長時間働いている

 

リーダーシップの根幹はコミュニケーション習慣にあり

12の行動パターンから見えることは、コミュニケーションがリーダーシップの根幹を成すものだということです。優れたリーダーは、決められたスケジュールに沿って最低限必要なテーマについて話すだけではありません。むしろ、貴重な機会を逃さないよう柔軟に対応し、社内外や上下関係を問わず様々な人と接することで、ビジョンの策定や人員の選定において参考材料となる情報をキャッチしているのです。

 

また、日頃のコミュニケーションによって人脈と信頼が構築できていれば、ビジョンの周知も容易となります。リーダーシップを取るための時間をあえて割く必要もなくなるため、マネジメント作業の時間も多く取れるようになるでしょう。一見、非効率的に見えるコミュニケーション重視の行動パターンが、結果的には効率的な時間配分をもたらすと言えるのです。改革を実現するためのリーダーシップはまずコミュニケーションから。まずは社内の人との何気ない会話から始めてみてはいかがでしょうか。

 

参照

[1]ジョン・コッター著「リーダーシップ論(第2版)」ダイヤモンド社
[2] https://www.hiroyukikaneda.com/170816-john-kotter/

【お知らせ】

マネジメントが属人的で学ぶ機会や制度がない会社は多くあるものです。

また世の中で多く提唱されているマネジメント手法は、感情的や感覚的になってしまっているものが多く、時にそれが自組織で結果を出すために合理的なのかどうか疑ってしまうようなものもあります。

一方でヒトの意識構造に着目した理論をベースとした「識学」のマネジメントは論理的なものです。

様々な組織の問題をロジカルに説明し、その解決策をご紹介します。

その識学を多くの人に知ってもらうために、「識学マネジメントカレッジ」と題して、

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