2019/03/14

ガバナンス、コンプライアンスのちがいは?これらの言葉がなぜ必要か?

「ガバナンス」と「コンプライアンス」という言葉は、なんとなくで使用されているビジネス用語の代表例です。両者はほとんど同義として使われることもあるので、意味を混同していないか不安になってくることもあるのではないでしょうか?

 

今回はコンプライアンスとは一体何か、またガバナンスとは一体何かということを順に説明し、その違いについてご説明していきます。続いて、なぜこれらの言葉が必要になったのかという点を見ていきます。

 

「ガバナンス」と「コンプライアンス」の決定的なちがいは?

まずはそれぞれの明確な意味を説明し、その違いや、この新しい言葉がなぜ必要になったのかということについて考えていきましょう。

 

ガバナンスとは「企業自身が企業を管理すること。」

ガバナンスは英語でgovern「支配する」が名詞になったものです。「支配・統治」という意味で、英語では主に「国家を」統治する意味で使われることが多い単語です。

 

ビジネスにおいて使われる「ガバナンス」は「コーポレート・ガバナンス」を略したものです。「corporate」とはcorporation(企業)の形容詞で、「企業の」という意味になります。つまり「コーポレート・ガバナンス」は、「企業の統治」という意味です。企業が何を統治するのか?「企業自身を」です。

 

つまり注目したいのは、普通管理や支配といえば「するもの」と「されるもの」が別々なはずですが、「自分で自分を管理する」という使われ方をしている点です。そのちょっと変わった使い方にこそ、「より意識的に」「今まで以上に積極的に」自分たちで自分たちの企業を統制していこうという主体的な姿勢が表現されていると言えるでしょう。

コンプライアンスは、「企業の外側のさまざまな規則・倫理に従うこと。」

「コンプライアンス」とは「comply」「従う、応じる」という意味を持つ動詞が名詞になったものです。つまり「企業が従うこと」。何に従うのか?法律や道徳習慣、社会的な規範、社会的な倫理に、です。

 

したがって「コンプライアンス」は主に「法令遵守(じゅんしゅ)」と訳されます。

 

必ずしも法律だけなのではなく、企業のモラルの意味も含むことに注意しましょう。いやむしろそれこそが、わざわざこの横文字を使う理由なのです。今や企業は法令を守っているだけでは不十分であり、さまざまな社会規定や規範も守らなければいけない。「遵守すべき対象が、かつてよりもかなり広がっているよ」ということ、「企業の社会的責任の重要性が高まっているよ」という意味も、この言葉には含まれているのです。

ガバナンスと、コンプライアンスのちがいは?

コンプライアンスは、企業が法令に「従う」ことで、ガバナンスは企業が企業自身を「支配する」ことになります。

 

意味の上では異なります。異なるどころか、governと、complyとはちょうど主従関係が「真逆」です。「支配すること」と、「従うこと」ですから。

 

しかしながら、そもそも「ガバナンス」する理由・目的が、「コンプライアンス」するためです。つまり単に「支配する」というよりも、「(社会に従うために)支配する」という意味合いが、「ガバナンス」という言葉には含まれているのです。

 

「コンプライアンス」と「ガバナンス」という2つの言葉は、強い因果関係で結ばれています。だから結果的に、同じような意味として使っても問題ないのです。「コンプライアンス強化」は「ガバナンス強化」なのです。人は明確な因果関係にある二つの言葉を、同じ意味として使います。たとえば「汗水流す」は「稼ぐ」と同じ意味として使うでしょう?

 

つまり厳密な使い分けが問題なのではなく、むしろ重要なのは、どちらかだけが使われている場合でも、この両者の因果関係をしっかり押さえておくことです。

 

ガバナンスとコンプライアンスという言葉がなぜビジネスで必要になっているのか。

なぜガバナンスとコンプライアンスという言葉がビジネス用語として現在頻繁に使われるようになったのか、どうして必要なのかということについてもきちんと理解しておきましょう。

 

効率化が進むこの世の中で、不要なのに言葉が誕生するということは考えられません。この言葉は、是非現代のビジネスシーンで必要なのです。その理由もセットに理解してこそ、本当にこの言葉の意味がわかっていると言えます。

 

主な理由は3つです。

ガバナンスとコンプライアンスという言葉が必要な理由その1――情報の価値が上がってきている。

2000年から始まったIT革命はなお進化を続け、超高度な情報化社会へと進みつつあります。

 

その影響によってこの「ガバナンス」と「コンプライアンス」という言葉が必要になったことは間違いありません。この2つの言葉を、単に「最近企業の不祥事が増えた」といった、「今現在あなたの目に入ってくる状況」だけから考えるのではなく、この言葉がまだなかった時代と比較することによって、はじめてその本質的理由が見えてくるはずです。

 

そしてその違いは企業が扱う「情報の価値」があがってきていることです。

 

企業が昔では考えられないほど情報の価値が上がり、流出した際のリスクも深刻なものになってきました。たとえば顧客情報などが外部に流出してしまえば、「重大なコンプライアンス違反」として企業の深刻な信用低下につながります。そのため、その管理の徹底が必要になった。だから新しい言葉を作って、しっかりそれを意識化する必要があったのです。

ガバナンスとコンプライアンスという言葉が必要な理由その2――社内の情報が露見しやすくなった。

情報化社会による影響は、顧客情報などの流出の問題だけではありません。

 

もう一つは情報化社会になったことによって、誰もが簡単に情報の発信者となれるという環境も生み出している、という影響です。誰もがブログを数秒で開設できますし、TwitterやFacebookなどで簡単に日常のことを発信し、その発言を世に問えます。

 

だから社内のことも、社員が簡単にそれを世間に伝えることもできます。実際「退職エントリー」といって、企業を退職した人がその企業のメリットやデメリットについて赤裸々にブログで語る記事がよく注目され、時にバズまで起こっています。[1]

 

いかがでしょうか?

 

このようなことが果たして90年代にはありましたでしょうか?すなわち企業がもしも何かしらの違反を犯していれば、今やそれを社内だけでもみ消すということは、不可能な時代なのです。

 

かつての企業が悪いことばかりをしていたとは言いませんが、少なくとも、誰もが平等に発言力を持つ今現在は、そのような「社内だけのごまかし」が全然通用しなくなってきたということは間違いないでしょう。だから「コンプライアンス」と「ガバナンス」という新しい言葉を作ってでも、その徹底を、企業が常に意識しなければならなくなったのです。

ガバナンスとコンプライアンスという言葉が必要な理由その3――企業価値の向上が期待できるようになった。

しかし一方でこうした状況であるからこそ、企業の「良い情報」も広まりやすくなっています。

 

コーポレートガバナンスをしっかりと実施することによって対外的に優良企業として認知されれば、生産性の向上につながるのです。企業価値が向上すれば金融機関からの融資を受けやすくなりますし、中小企業であれば経営が安定する効果も期待できます。

 

しっかりと経営監視の強化を行う企業が、伸びていく社会になっているということが言えるでしょう。

 

だからさまざまな企業は、積極的な面からもガバナンスまたコンプライアンスを重視するようになっているのです[2]。

 

ガバナンスやコンプライアンスと関連のある言葉

ガバナンスやコンプライアンスと言う言葉が企業に浸透してくると同時にそれに関連してまた別の言葉も登場しています。

 

ガバナンスとコンプライアンスをしっかり理解した上で以下の2つの言葉についてもしっかりと理解しておきましょう。

「ガバナンス」や「コンプライアンス」と関連のある言葉その1――ステークホルダー

 

ステークホルダーもコンプライアンスと同時に現代ではとても重要な言葉です。

 

企業経営における様々な利害関係者のことで、株主から経営者、従業員、顧客、取引先のみならず、金融機関や競合企業さえ、さらには地域社会や行政機関さえも含みます。今やただ顧客や株主だけを見据えた経営では存続ができないのであり、いかに「企業の社会的責任」の重要性が高まり続けているかが、この言葉が使われるようになったところからもよくわかります。

「ガバナンス」や「コンプライアンス」と関連のある言葉その2――CGコード

 

CGは「コーポレート・ガバナンス」の略です。そのコード、つまり「コーポレートガバナンスの規定」。東京証券取引所によって提示されているコンプライアンス遵守のための提案・方針のことです。

 

企業がステークホルダーを踏まえた公正な意思決定を行う仕組みとして必要な、様々な規則を提案しています。5つの基本原則とそれに付随した30の原則、さらにそれらを補足する38の原則から成り立ち、合計73項目あります。[3]

 

「ガバナンス」「コンプライアンス」という場合、このCGコードを見据えた意味合いとして使うこともあります。

 

まとめ――逆に死語になるのは「企業機密」?

 

以上今回は、最近ビジネスシーンでかなり使われるようになった「コンプライアンス」と「ガバナンス」の明確な意味のちがいと、この言葉が使われるようになった時代的背景、関連用語についてご説明してきました。

 

この2つの言葉が使われるようになった理由は、最近になって企業の不祥事が増えたからというよりも、情報化が加速度的に進む中で、企業内部の状況が世間に明るみにされやすくなっているからでしょう。

 

いまやビジネスは「不完全情報ゲーム」から「完全情報ゲーム」になりつつある。ポーカーから、チェスに。ババ抜きから、将棋に。考えてみれば90年代以前の社会は、騙したり騙されたり、いかに相手に巧みに情報を隠せるか、いかに実際以上に誠実にみせられるかがその存否を分ける時代だったようにも思えます。嘘がうまい人が儲かる、非本質的な時代だったように。

 

コンプライアンス遵守の風潮は以降もどんどん強まっていくことでしょう。しかしむしろその状況から目を背けず、積極的に情報を公開していく〝愚直さ〟によって、しっかり成果が上げられるという状況にもなっているという面も見逃してはいけません。本当にいい商品や、本当にいいサービスが提供できれば、それに見合った対価がきちんと支払われる時代になったとも言えるのです。

 

では逆にあなたは、今から10年後にこれらの言葉と入れ替わって淘汰されていく言葉は、なんだと思いますか?

 

「社外秘」でしょうか?

 

「ビジネスマナー」でしょうか?

 

参照

[1]退職エントリとは?|なぜ退職エントリを書くのか、その傾向を調べてみた | HR NOTE
https://hcm-jinjer.com/media/contents/b-contents-7501/
[2]コーポレートガバナンス – 経営の考え方 – 企業情報 – Panasonic
https://www.panasonic.com/jp/corporate/management/governance.html
コーポレートガバナンス報告書- Panasonic
https://www.panasonic.com/jp/corporate/ir/pdf/pcg.pdf
[3]有価証券上場規程(東京証券取引所)| 日本取引所グループ
http://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070007001.html
[4]コーポレートガバナンス・コードへの対応状況|日本取引所グループ
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000002nrg9.pdf

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