2019/05/15

 自分軸で伝えよう ~アサーティブコミュニケーション~

自分の気持ちをはっきりと相手に伝えることができるということは、ビジネスにおいても実生活においても明らかに大切なスキルだと思います。

しかし、ただ言いたいことを何でもずけずけと言うだけでは、うまくいかないことのほうが多いようにも感じます。

 

「自分の意見をはっきりと伝えた上で、周りとの関係を良好に保ちたい」

今回はそれを叶えるスキルとして、『アサーティブコミュニケーション』について学んでみましょう。

 

アサーティブコミュニケーションとは

アサーティブ(assertive)を英和辞典で調べてみると「独断的な」「自信満々の」「自己主張の強い」というように、やや強い印象のある言葉が並んでいます。[1]

そのため、アサーティブであるということは、自分の意見をただ押し通すことと勘違いされてしまいがちですが、そうではありません。

英英辞典で調べてみると、「behaving in a confident way, so that people notice you」(人々が自分を分かってくれるように、自信を持ってふるまう)と書かれています。[2]

ここで重要なのは、「自分をわかってくれるように」という部分です。自分をわかってもらうには、まずは相手にきちんと受け止めてもらう必要があります。

 

つまりアサーティブコミュニケーションとは、自分の意見や主張を自信をもって相手に伝え、それを相手に認めてもらうためのスキルなのです。

 

 

4つのコミュニケーションタイプ「攻撃的」「受身的」「作為的」「アサーティブ」

それでは、アサーティブなコミュニケーションと、そうでないものにはどのような違いがあるのでしょう。コミュニケーションのタイプを4つに分類して考えてみましょう。

 

攻撃的タイプ「自分はOK、相手はNG」

自分に自信があり、意見をはっきり伝えることができますが、相手の意見を無視し、一方的な伝え方で論破して従わせる傾向があります。

 

受身的タイプ「自分はNG、相手はOK」

自分に自信が無いため、相手の意見を素直に受け入れます。そしてその裏には、自分が嫌われたくない、傷つきたくないという心理が働いています。

 

作為的タイプ「自分も相手もNG」

自分に自信が無いため自己主張しない上に、相手の意見にも否定的な反応をします。反対意見や愚痴だけを述べて代替案を出さないようなタイプです。

 

アサーティブタイプ「自分も相手もOK」

自分中心にも相手中心にも偏らず、問題解決の方向を見据えて対等に振る舞います。その上で自分に自信をもって、はっきりと意見を伝えます。

 

受身的タイプや作為的タイプの人は、自分を守るために敢えて自己主張せずに「責任」から逃れようとしており、ある意味自己中心的であるとも言えます。

また、攻撃的タイプの人は、「自分は言いたいことははっきり言える」と認識しているため、特にアサーティブなスキルは必要ないと思っていることが多いようです。

しかし「何でもはっきり言う」ことと、「相手に響くようにアサーティブに伝える」ことは、似ているようで全く異なるものなのです。

それでは、アサーティブに自己表現するためにはどうすればよいか考えてみましょう。

 

大切な4つの心構え「誠実」「率直」「対等」「自己責任」

アサーティブな表現のためには、どのような点に気をつけて伝えればよいのでしょう。ポイントは以下の4つの心構えです。

 

「誠実」:相手にも自分自身にも、正直になる。

「率直」:相手の感情に配慮した上で、率直な意見を伝える。

「対等」:上から目線でも卑屈でもなく、態度も心の中も対等に向き合う。

「自己責任」:自分が言ったことの責任、言わなかったことの責任は、自分で引き受ける。

 

言葉のスキル以前にまず大切なのは、真摯に相手と向き合おうとする心の持ちようです。たとえ、どんなに熱意のある言葉で伝えたとしても、心の中で相手を尊重していなけば、相手の心に響かせることはできません。

 

アサーティブでないコミュニケーションの一例

ここで、恥ずかしながら筆者の若き日の失敗談を一つご紹介したいと思います。

三十代半ばのある日、私は自分の所属する部署のミス削減に関する報告書を作成していました。

私のいる部署は、クライアントである大手企業(N社)の管轄下にあり、クライアントの社員が常に駐在し、管理していました。私の報告書はまずN社の駐在社員(A氏)に承認を得た上で、N社上層部へ提出されるものでした。

ところが、報告書のある部分の記述について、A氏から書き直しを指示され、何度書き直しても一向にOKが出ません。どのように書けばよいかA氏に相談したところ、「この内容では上層部が納得しないから、このように書き換えてほしい。」と修正文がメールで送られてきました。

 

修正文を見た私は、さらに困ってしまいました。その内容が、明らかに的外れであるばかりか、突っ込みどころが満載でどう見ても上層部に通用するとは思えなかったのです。

しかし当時の私には、A氏に意見することで今までの関係を壊してしまい、今後仕事がやりづらくなってしまうのではないかという恐れがありました。

言うべきか言わざるべきか散々迷ったあげく、報告書の提出期限が迫っていたこともあり、私はA氏の修正文をそのまま記載することにしました。そうすれば差し戻されることはないはずですし、「上層部から何を言われようと、私が考えたものではない。」という、責任逃れの気持ちも多少あったのでしょう。

 

そして報告会の当日、私が該当の部分を読み上げたところ、電話会議の向こうの上層部から、やはり疑問の声が上がりました。「ほら、来た。」私は苦しい答弁を続けましたが、次々に矛盾点を指摘され、しどろもどろになってしまいます。たまらず助けを求めるように、A氏に視線を送りました。

すると、あろうことか、その記述を考えた張本人のA氏までもが上層部に加わって私に指摘をし始めたのです。結局は袋叩きの様相で、報告書はもう一度精査の上再提出となった上に、私は自社の上長やクライアント上層部からの信頼を失う羽目になりました。

 

お読みいただいてわかるように、仕事に取組む姿勢や報告のスキルなど、当時の私が全体的に未熟であったことは事実ですが、そこは一旦置いておきましょう。

アサーティブコミュニケーションの観点から見ると、A氏から修正文が送られてきた時点で、私はアサーティブな行動が何一つ取れていませんでした。つまり、自分の感じたことに「誠実」に目を向け、A氏の感情に配慮した上で「率直」に伝え、クライアントだからと言って卑屈にならず「対等」に向き合い対話すること。そして、自分が報告書に記載したことには「責任」を持つこと。まさに、前述の4つの心構え「誠実」「率直」「対等」「自己責任」が全て欠けていたのです。

 

さらに告白するならば、この報告会の後、私が取った行動も全くアサーティブではありませんでした。A氏に裏切られたと感じた私は、本人に直接気持ちを伝えて解決を図るのではなく、憤りのあまり「仕返し」をしてしまったのです。

どうやったかはご想像にお任せし、割愛させて頂きますが、しっかり「証拠メール」が残っていましたから、有効に使わせて頂きました。

その結果、A氏も上長からこっぴどく叱責されたようで、それが当時の私にはとても痛快に思えたことを覚えています。

認めたくはありませんが若さゆえの過ちであったと、これについても今では重々反省しております。

 

「No」を上手に伝える3つのステップ

皆さんは若き日の筆者のように、上司やクライアントからの依頼に意見することができず、しぶしぶ引き受けてしまうことはありませんか。

また、相手からの誘いや頼まれごとに、本当は気乗りしないのにどうしても断れず、承諾してしまうことはありませんか。

 

相手に合わせるあまり、自分の軸を見失うと、そのストレスは必ず体や精神状態に表れてきます。その結果、期待する成果が得られないことも多いのではないでしょうか。

 

しかし、せっかくはっきりと「No」を伝えることができても、相手に攻撃的な印象を与えてしまい、その後の関係に影響するようなことは避けたいものです。

では、攻撃的でなくアサーティブに「No」を伝えるための3つのステップをご紹介しましょう。

 

ステップ1:相手の気持ちを受け止め、正しく理解する

最初のステップは、誘いや依頼の背景にある、相手の気持ちを受け止めることです。たいていの場合、相手は自分を困らせようとしているのではなく、善意から誘ったり、良かれと思って依頼してくるのです。誘いや依頼を断る場合でも、その気持ちに対しては「yes」を伝えることで、攻撃的な印象を避けることができます。

 

例:「誘ってくれるのは大変うれしいですが」「せっかく頂いたチャンスですが」

 

ステップ2:何が「No」なのか、的をしぼって伝える

次のステップでは、相手の依頼に対して自分の何が「No」なのか、的をしぼります。

たとえば、頼まれたタイミングが問題なのか、仕事の量が問題なのか、期限が短すぎるということなのか、自分の趣向と合わないのか。

それを明確にすることで、相手に納得感を与えることができ、代替案の提示やその後の交渉がやりやすくなります。

 

例:「後任の育成にはあと1ヶ月必要です。なので、その間に自分が異動することは、避けたいと思っています。」

 

ステップ3: お互いに有益な代替案を提示する

ただ「できません」と伝えるだけでは、相手にとって納得感がありません。できなければどうすればいいのか、実現可能な代替案を提示することも「No」 を前向きに伝える方法の一つです。

 

例:「本日中にはできませんが、明日の午前中までお時間を頂けたら、丁寧に仕上げたいと思います。」

 

まとめ:自分軸とアサーティブ

今回は、アサーティブコミュニケーションに必要な4つの心構え「誠実」「率直」「対等」「自己責任」について学びました。そして筆者自身の失敗談をご紹介し、アサーティブコミュニケーションの中でも特に「No」と伝えるスキルについて掘り下げてみましたが、いかがでしたでしょうか。

 

若い頃の筆者は、今回のエピソードからもわかるように非常に受身的でした。そして仕事上ではいつも何かに追われていたり、他者に振り回されているように感じていました。

しかしある時、それは思い込みだということに気づいたのです。

何かに追われていたのではなく、ただ自分が逃げているだけでした。振り回されていたのではなく、自分が他者の周りを勝手にぐるぐる回っているだけでした。

そして逃げるのをやめ、回るのをやめたとき、自分を軸にして行動できる自由に初めて気が付いたのです。それからは自分軸で考え、行動し、責任を持つことを心がけたところ、仕事の状況は驚くほど好転しました。そしてそれは今も続いています。

 

自分軸で行動するというのは、自分勝手にわがままに振る舞うことではありません。

それを理解するためのスキルとして、今回学んだアサーティブコミュニケーションはとても有効な手段だと感じました。

もしも以前の筆者のように、他者に振り回されているように感じている方がいましたら、ぜひ実践してみることをお勧めいたします。

 

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参照

[1]weblio英和辞典「assertive」
https://ejje.weblio.jp/content/assertive
[2] ロングマン現代英英辞典「assertive」
https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/assertive