2019/05/29

モチベーションアップの秘訣は「やる気」ではなく「動機」にある

部下のモチベーションを高めるのに、説教や飲みニケーションで「やる気」を高める方法を使っていないでしょうか。「やる気」は目に見えない主観的な感覚なので、これにフォーカスするとひとりよがりのマネジメントになりがちです。本当に考えるべきは、目に見えない「やる気」よりも客観的な法則のある「動機」なのです。

 

なぜモチベーションの喚起に「やる気」を頼ってはいけないのか

 

やる気は揺らぎやすい

やる気というものは、非常に不安定で持続性に欠けるため、安定的な行動の継続と成果を出すという点で頼ってはいけません。たとえば、「前日の夜にみなぎっていた情熱が朝起きた途端に完全に鎮火していた」という経験がある方も多いのではないでしょうか。感情というものは、本質的にはコントロールが不可能な代物で、内的・外的な刺激によってすぐに変化します。体調不良や苦手な人との接触、単なる匂いや音だけでもやる気はしぼんでしまう可能性があります。したがって、持続的なモチベーションを得るには感情に頼る以外のアプローチが必要です。

 

やる気を上げても行動に直結しない

仕事や勉強のやる気を上げるために、音楽を流したり、自己啓発セミナーに参加したりする人は割と多いのではないでしょうか。最近ではSNSで頑張る人をフォローしてやる気を分けてもらうという人もいるかも知れません。しかし、これらの行動が本来の目的であるモチベーションの喚起につながることは多くないでしょう。大抵の場合、これらの成果として得られたモチベーションは、本来の目的である仕事や勉強に還元されません。音楽を聞いて気分が上がったなら音楽を聴き続け、自己啓発セミナーに感動したなら次回のセミナーに参加し、SNSで元気をもらったならタイムラインを追い始めることになるでしょう。やる気を得た(と勘違いした)行動を継続するだけなのです。

 

やる気は定量的に計測できない

安定的にモチベーションを維持したいのなら、そのアプローチとなるものは、可能な限り数値や文字などで記録・計測できる指標を用いるべきでしょう。しかしながら、やる気は実体がなく極めて主観的なものですので、第三者がやる気を正確に計測することはほぼ不可能です。ある人が精力的に働いているのをみて「やる気がみなぎってるね!」と感じることはあるでしょう。しかし、これは行動を見て「やる気が出ているのだろう」と主観的に評価しているに過ぎません。つまり、直接的にやる気を計測しているのではなく、行動をから推測しているに過ぎないのです。

 

モチベーションは感情ではなく行動で測る

私たちがやる気を出したいと感じるのは、行動を喚起して結果・成果につなげたいからです。その意味で本当に考え計測するべきは、「いかにやる気を出せたか」ではなく、「どれだけ行動できたか」だといえるでしょう。モチベーションの維持・管理において重要なのは、感情ではなく行動です。目的とする行動を実行に移せたとき、逆説的に「やる気が出ていた」「モチベーションがあった」と評価することができるのです。

 

動機づけこそが行動につながるモチベーションを育む

行動につながるモチベーションを喚起するには、やる気などの感情をコントロールすることではなく、「動機」にフォーカスすることが大切です。動機という言葉は、特に刑事ドラマやミステリーでおなじみですね。たとえば「保険金を手に入れるために殺害した」というのは、殺害という行動が保険金というメリットに紐付けられて起こっています。客観的にも納得できる「動機づけ」がなされているのです。このように、客観的に観測・説明できる因果関係を実行したい行動に組み込むことで、私たちは行動につながるモチベーションを獲得することができます。

 

行動につながる動機付けとは「メリット」である

因果関係と聞くとややこしい感じがしますが、動機付けにおいて念頭に置くべきことは1つだけ。

 

・その行動を実行することで、どのようなメリットが獲得できるのか

 

ということです。動機づけとは、人間を含めた動物が持つ根源的な損得勘定に働きかける手法です。私たちは生きるために、食物や快楽といったメリットを伴う行動には積極的になる一方、エネルギーの消耗や生命の危機といったデメリットを伴う行動には消極的になります。いかに行動の先にメリットを得られるように環境を構築できるか、この一点にモチベーションアップの鍵が隠されているのです。

 

外発的な動機付け

人の動機付けを研究したアメリカの心理学者、エドワード・L・デシによると、動機付けには外発的な動機付けと内発的な動機付けの2つがあるとされています(1)。まずは、外部からメリットがもたらされる外発的な動機付けについて説明します。

 

報酬

いわゆる「にんじんをぶら下げる」アプローチです。

 

・お母さんの家事を手伝ったらお小遣いがもらえる
・テスト勉強を頑張ると良い点を取れて尊敬される
・仕事に精力的に取り組むと昇級や昇進につながる

 

といったように、行動によってもたらされる報酬がモチベーションを確立します。個人で行う場合には、たとえば「書類を1枚書き終わったらコーヒーを1杯飲む」「今日中にタスクを終えたら飲みに行く」などといったルール設定を行うと報酬により行動が喚起されやすくなるでしょう。

 

嫌悪からの逃避・回避

こちらは「おしりに火をつける」アプローチ方法です。嫌なことから逃げる、あるいは嫌なことが起こらないよう回避するというように、報酬ではなく嫌悪的なイベントが行動の源になります。

 

・バイトをクビにならないよう遅刻せず出勤する
・プレゼンで大恥をかかないよう入念に資料作成をおこなう
・企画の担当者にならないよう会議で沈黙をつらぬく

 

ビジネスシーンではこのような例が挙げられます。極端な話をすれば、たとえ運動嫌いの人でも「10㎞走らないと全財産が没収される」という状況になれば必死に10㎞を走り抜くでしょう。この動機付けを利用するには、時間的な制約を意図的に設けるのが有効な方法となります。たとえば、17:00に友人と約束をする、あるいは飛行機の予約を取るなどの状況を作り出し、その時間までに仕事を終わらせないと面目が潰れる、飛行機に乗り遅れるといった危機的状況を作り出すわけです。

 

マネジメントにおける外発的動機付けのメリット・デメリット

外発的動機付けは、外部からの介入がしやすい点がメリットです。してほしい行動に対して、金銭や物品、休暇など報酬として提示することでモチベーションを上げることができるでしょう。ユニークなものとしては、頑張った社員には取引先を切る権利を与えている会社もあります[2]。これは仕事の結果として嫌悪的なものから逃避できることがメリットとなっています。デメリットとしては、外発的動機付けにはその報酬を得られる以上のパフォーマンスは期待できないということです。5㎞走ったら1万円の報酬がもらえるとして、5㎞以上走る人はまずいないでしょう。予想を超える成果を求めるには外発的動機付けだけで不十分なのです。

 

内発的な動機付け

内発的な動機付けは、外部ではなく個人の内側にメリットが発生することで行動が喚起される状態です。内発的動機付けには目に見える報酬や因果関係がないため、傍からは「好きでやっている」というように見られます。デシは内発的な動機付けには3つの要素があると論じました。

 

自主性(自律性)

人は、自分の意思で選択した行動に対して強いモチベーションを感じるようになります。反対に誰かに指示された行動は社会における従属的な立場を強く意識することにつながり、強い不快感と反抗的な態度のきっかけになります。たとえやろうと思っていた行動でも、人から指示されると途端にやる気が失せてしまったという経験がある人は多いのではないでしょうか。相手のパフォーマンスを最大限引き出すためには、ガチガチに固めた指示をするのではなく、自主的に行うべき行動を考えさせるか、取るべき行動について複数の選択肢を用意すると良いでしょう。

 

有能感

自分の能力の高さを認識できる行動には、積極的に取り組む傾向があります。それは、自分の生きる社会を自分の手で作り上げているという充足感や、生きていく上で十分なスキルを持ち合わせているという安心感に起因するものかもしれません。有能感を感じるには、漫然と行動するのではなく、明確な目標を掲げてそれを達成することが大切です。マネジメントでは、相手の力量を見極めて適切なタスクを提示し、達成した際に自尊心を促すような振る舞いが求められます。

 

関係性

人は極めて社会性の強い動物です。人からの評価によって行動を変え、良い関係性を築ける行動には積極的になり、反対に悪印象を与える行動には消極的になります。周囲との関係性を良好に保つためには、相手のことを思いやる取り組みが大切です。「情けは人のためならず」なのです。

 

内的動機付けのメリット・デメリット

内発的動機づけのメリットは、個人の内側にある動機で行動が促されるため、明確な報酬を用意しなくて良いのがメリットです。また、デシの実験では外発的な動機付けよりも高い羽フォーマンスを引き出せることがわかっています。いわゆる「楽しくてやっている」という状態になるためです。一方、マネジメントとしては外的な報酬で促せるものではないため、動機付けの方法として確立しにくい点がデメリットです。

 

まとめ:動機付けの使い分けがモチベーションアップのコツ

マネジメントとして動機付けを考える際は、基本的に外発的動機付けを念頭に考えれば良いでしょう。明確に達成基準が決まっているルーティンワークについては予想以上のパフォーマンスというものは求められないからです。

一方、新たなプロジェクトや製品開発などにおいては、最大限のパフォーマンスを発揮してもらう必要があります。この場合は、いかに内発的な動機付けを促せるように環境を構築できるかが重要です。自律性を促すには、業務を強制せず、選択肢を与えたうえで参加させると良いでしょう。有能感を促すには適材適所を見極めること、関係性を維持するには良好な関係を保てるチームを構成することが必要です。どれもマネジメントの基本ではありますが日常的に相手を観察していないと難しいことでもあります。相手への十分な理解こそが最大限にモチベーションを引き出す取り組みの第一歩となるのです。

 

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参照
(1)エドワード・L・デシ著「人を伸ばす力」新曜社、1999年
(2)https://careerconnection.jp/biz/tvwatch/content_1593.html