2019/05/30

モチベーションを上げるには『報酬』か『やりがい』か?

「働くモチベーションはなんですか」と聞かれたら、あなたは何と答えますか?

給料がもらえることでしょうか?それとも仕事自体にやりがいや魅力を感じることでしょうか。

 

『報酬』か、『やりがい』か。仕事に対するモチベーションを上げるためには、どちらが効果的なのでしょう。今回は、ある実態調査の例について、モチベーション理論に当てはめながら考えてみましょう。

 

「働く目的・モチベーション」に関する実態調査

ここでまず、一つのアンケート結果をご紹介します。[1]

これは、ある企業が2013 年にインターネットで行った「働く目的・モチベーション」に関する実態調査です。20代~50代の就労者(会社員、公務員、経営者・役員、自営業、自由業)616人からの回答をもとに分析を試みています。

 

働くモチベーション1位は「給料がもらえること」

下記は、この実態調査の中での「あなたの働くモチベーションは何ですか?」という問いに対する回答結果です。

 

〈20代〉
1位 「給料がもらえる」87.7%
2位 「成長を実感する」17.5%
3位 「成果が出る」13.6%
4位 「プライベートが充実する」13.6%
5位 「出世・昇給する」13.0%

 

〈30代〉
1位 「給料がもらえる」76.0%
2位 「仕事が面白い」16.9%
3位 「成果が出る」16.2%
4位 「成長を実感する」15.6%
5位 「プライベートが充実する」13.0%

 

〈40代〉
1位 「給料がもらえる」69.5%
2位 「能力を活かせる」20.1%
3位 「仕事が面白い」19.5%
4位 「成果が出る」19.5%
5位 「家族の幸せ」16.2%

 

〈50代〉
1位 「給料がもらえる」74.0%
2位 「好きな仕事ができる」20.1%
3位 「仕事が面白い」19.5%
4位 「能力を活かせる」18.8%
5位 「成果が出る」18.2%

 

すべての年代でダントツ1位となったのは「給料がもらえる」こと、つまり『報酬』で、なんと全体の76.8%を占めています。そして2位以下には「成長を実感する」「仕事が面白い」「能力を活かせる」など、年代ごとにやや違ってはいますが『やりがい』がランクインしています。

それでは、まずは年代ごとにどのような特色が出ているのか詳しく見てみましょう。

 

モチベーションの年代別傾向

まず、全年代で1位の「給料がもらえる」ですが、特に20代では87.7%とかなり高い割合となっています。学生から社会人へと人生の中でも大きな変化を迎える中で、お金を自分で稼ぐ喜びを最も味わうことができる時期なのかもしれません。

また、20 代・30 代の若い世代では「成長を実感する」や「プライベートが充実する」がランクインし、公私ともに自分自身の充実を求める傾向が窺えます。

一方「仕事が面白い」は、20 代ではわずか 4.5%であるのに対し、30 代以上では15%を超えており、その頃から仕事の面白さが分かるようになる人が多いのでしょう。

40代・50 代では「能力を活かせる」がランクインしており、これまでに培ってきた能力を発揮できることが、モチベーションとなっているようです。

 

職業ごとのモチベーション

この実態調査では様々な職業の人々から回答を収集しており、職業ごとの傾向を分析しています。職業別の特色は下記のとおりです。

 

〈会社員〉

「給料がもらえる」の割合が全職業の中で最も高く、80%を超えています。また、「出世・昇給する」「プライベートが充実する」についても、全業種の中で最も高い割合となっています。

一方、「社会に貢献する」「仕事で成果が出る」「能力を活かせる」「周りから感謝される」「仕事が面白い」「好きな仕事ができる」などが低いという結果が出ています。

 

〈経営者〉

「お客様に貢献する」の割合が、他の職業と比べてダントツに最も高く、「仕事で成果が出る」「好きな仕事ができる」「仕事が面白い」なども比較的高い傾向があります。

一方、「給料がもらえる」「プライベートが充実する」が最も低い結果となっています。

 

〈公務員〉

「社会に貢献する」「仕事が面白い」「人間関係が良好」「家族の幸せ」の割合が高い傾向があります。その中でも「人間関係が良好」「家族の幸せ」の割合は、他の職業と比べて突出しています。最も低かったのは「自己実現につながる」の項目でした。

 

〈自由業〉

「能力を活かせる」が、他の職業と比べて突出して高い傾向にあります。「成長を実感する」「自己実現につながる」「好きな仕事ができる」も高く、「家族の幸せ」が最も低いという結果でした。

 

モチベーション理論による考察

実態調査の結果を見ると、働くモチベーションは何かという問いに対し、圧倒的多数の人が「給与」つまり『報酬』であると回答しています。

やはり、モチベーションには『報酬』が有効なのでしょうか?

それでは、この実態調査の結果を、古典派モチベーション理論の中でもよく知られている「欲求5段階説」と「二要因理論」にあてはめて考えてみましょう。

まずは、この二つの理論について簡単にご紹介します。[2]

 

マズローの「欲求5段階説」

アメリカの心理学者、アブラハム・マズローによって1943年に提唱された「欲求5段階説」は、古典的なモチベーション理論の中でも最も広く知られているものの一つです。

マズローはこの理論の中で、人の欲求は、自己実現を達成するまでに低次から高次へ向けて下記の1から5の段階を順番に経て満たされていくものと考えました。

 

  1. 「生理的欲求」:食欲・睡眠欲のように、生きるための本能的な欲求です。
  2. 「安全欲求」:危機を回避し、最低限の安全を確保したいという欲求です。
  3. 「社会的欲求」:集団に属し仲間と共にあることで、孤独や不安から逃れたいという欲求です。
  4. 「承認欲求」:他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。
  5. 「自己実現欲求」:自分の能力を引き出し、価値を高めたいという欲求です。

 

ハーズバーグの「二要因理論」

二要因理論(動機付け・衛生理論)とは、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが1959年に提唱した理論です。

ハーズバーグは、人々が仕事上のどんなことで満足を感じ、どんなことで不満足を感じるのか調査しました。その結果、満足を感じる時は、その人の関心は仕事そのものに向いているのに対し、不満を感じる時は、その人の関心は自分たちの作業環境に向いているという結果が出たのです。

 

ハーズバーグは、満足を感じる要因を「動機付け要因」と名づけ、より高い成果を目指して人々を動機付けるものであるとしました。例えば、「やりがい」「承認」「仕事そのもの」などがこれに当たり、一人ひとりの価値観から出てくる要因であると言えます。

 

また、不満を感じる要因を「衛生要因」と名づけ、不足すると不満を引き起こしますが、満たしたからといっても満足感につながるわけではないものと考えました。これは外部からくる要因であり、「会社の管理」「上限関係」「労働条件・給与」などのことです。

 

ハーズバーグによって述べられているのは、「衛生要因」をいくら満たそうとしたところで、モチベーションを上げることはできないということです。

例えば、給与や労働条件を改善したとしても、不満を防ぐ効果はありますが、満足感を得る、つまりモチベーションを上げることにはつながらないと考えたのです。

 

『報酬』か『やりがい』か、二つの理論をもとに考える

それでは、「欲求5段階説」と「二要因理論」を実態調査の結果に照らし合わせてみます。

まずは、モチベーションの要因としてどの年代でも最も高かった「給料がもらえる」こと、つまり『報酬』について考えてみましょう。これはマズローの「欲求5段階説」によると、給料をもらうことによって経済的な「安全」を確保したいという「安全欲求」であると考えられます。

そうすると、76.8%もの人が、5段階の欲求のうち、下から2番目の低次欲求を満たすことが一番のモチベーションであると回答したことになります。

このように考えるとなんだか残念な結果のように思えますが、そうとばかりは言えないと筆者は考えます。

なぜなら、このアンケートでは、選択肢の中から最大3つまで回答を選択できるのです。

多くの人が「まずは生活するためにはお金が必要だ。だから給料がもらえることは外せない。その上で大事なことは、〇〇と…」というふうに考えたのではないでしょうか。

つまり、多くの回答者が低次の「安全欲求」である「給与」をまず選んだ上で、あとはそれぞれ個別に高次な欲求を選んだことになり、回答数は「給与」が一番多くなります。

これは、マズローの言う「欲求は低次から高次へ段階的に満たされていく」という理論に合致する結果であると言えるでしょう。

 

また、ハーズバーグの「二要因理論」に当てはめると、給与は「衛生要因」に分類されます。つまり、不足すると不満を引き起こしますが、満たしたからといっても満足感につながるわけではないと考えられています。

もし、仕事に対するモチベーションが「給料がもらえる」ことだけだという人は、その仕事で満足感を得ることは難しいでしょう。

 

それでは次に、2位以下の項目を見てみましょう。「仕事が面白い」「成長を実感する」「能力を活かせる」など、『やりがい』にかかわる項目がいくつも挙げられています。マズローの分類では、最も高次の欲求とされる「自己実現欲求」です。

また、これら『やりがい』の項目は、ハーズバーグの分類では、より高い成果を目指して人々を動機付ける「動機づけ要因」に当てはまります。

「二要因理論」によると、これらを満足させることでモチベーションを上げることができるのですが、職業別の結果によると、会社員はこの項目が軒並み低い結果となっています。

一方で、経営者や自由業は高い結果が出ていますが、これは逆に高いモチベーションを維持できているからこそ、その仕事が続けられているとも言えるでしょう。

 

まとめ

今回は『報酬』と『やりがい』どちらが有効か、モチベーション理論に基づいて考えてみましたが、いかがでしたか?

 

実態調査の結果だけを見ると、「給与」つまり『報酬』が圧倒的に有効であるようにも見えました。しかし「欲求5段階説」に照らし合わせると、より低次の欲求であるがゆえに多くの人が選択する結果となったのではないかという考えに至ります。

また、「二要因理論」では、『報酬』を満たすことだけでは不満の解消はできても満足感は得られず、『やりがい』を満たすことで満足感を得ることができることを学びました。

 

冒頭の問いに対する今回の結論として、『報酬』と『やりがい』どちらがよりモチベーションに有効かというと、『やりがい』であると言えるかもしれません。しかし、それは『報酬』に満足していることが前提となります。

モチベーションを高めるためには、『報酬』への欲求を満たしたうえで、さらに『やりがい』の欲求を満たすことが理想と言えるでしょう。

 

 

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参照

[1]「働く目的・モチベーション」に関する実態調査
https://corporate.o-uccino.jp/wordpress2/wp-content/uploads/2013/10/pr20131029_hatarakuimi.pdf
[2]モチベーション理論とは?やる気を高めるための理論を徹底解説
https://bizhint.jp/report/99165