2019/06/01

BtoBの顧客満足=カスタマー・サクセス、経営哲学は顧客感動

21世紀に入り、クラウド業界からカスタマー・サクセス(顧客の成功)という考え方が提言されるようになりました。しかし実は、この考え方はクラウド業界のみならず、企業を顧客とするBtoB企業の顧客満足活動にも当てはまるのです。

企業が繁栄していくためには顧客満足が有効だと言われていますが、残念ながら多くの企業では、顧客満足の心理的本質を十分に理解しているとはいえません。

そこでこの記事では、顧客満足に関係する心理を明らかにして、BtoB企業におけるカスタマー・サクセスのあり方を紹介してまいります。

 

顧客満足に働く心理は「返報性のルール」

心理学者のダニエル・カーネマンは、心理学で人々の経済行動を解き明かした「行動経済学」「実験経済学」を提唱して、ノーベル経済学賞を受賞しました。このことから、経済学やマーケティングに心理学を応用する機運が高まってきました。既存の経済学では理性で判断する「完全無欠な経済人」を想定して理論構築してきました。ところが、感情に振り回されるのが人間の真の姿ですので、それに合わせた行動分析を行ったのです。

 

この延長線で、顧客満足の心理を明らかにするために心理学は有効なのです。

まず、心理学を用いて、顧客満足の本質を明確にする方法について説明しましょう。

人間は、ある刺激を与えると特定の反応を示します(次図)。これが心理学の基本です。このことから、相手の反応を見れば、何を感じているのかが推測できるのです。サービスや商品を提供するという刺激を与えることで、 “喜びの反応”(顧客からの感謝の言葉、お礼状、笑顔など)があれば、顧客が喜んだことがわかります。

 

欲求を満たすことで、顧客の満足度は上がり、喜びという反応を見せます。つまり、顧客が喜ぶことを追及していけば顧客の満足度がアップすることになります。次図のように、色々なサービスや商品(刺激)を試してみて、顧客の喜びのサイン(反応)の観察をします。そして、サービスや商品改善していけば、顧客満足のための具体的方策がわかり、顧客満足が実現することになります。別な表現をすれば、各企業にとって最適な顧客満足の実践法の明確化ができ、顧客満足のノウハウが手に入ることになります。

次に顧客が企業にお返しをしたくなるという心理について考察します。

 

人間社会にはお互いに助け合うシステムがあります。

人間は社会的動物であり、人間の先祖は、お互いに協力して狩猟生活を営んでいました。そこでは、大きく強い獲物には力を合わせて狩猟をする必要があり、グループ内でお互いに助け合わなければなりませんでした。そのために育まれてきたのが互恵性です。互恵性とはお互いの為になるという意味ですが、相互扶助のことでもあります。助け合いをすればグループの関係が深まりますが、一方的な奉仕になると相互扶助が崩れてしまい、助け合うことはできなくなります。

 

このようなことから、受けた好意に対して、相手にお返しをしなければならないと考える心理が生まれてきました。この心理を「影響力の武器」の著者で説得と承諾の研究者のロバート・B・チャルディーニは「返報性のルール」と呼んでいます。

つまり、顧客に満足を与えれば、返報性のルールが働き、顧客はお返しにその会社を信頼することや商品を購入するようになるということです。このように返報性のルールが顧客満足の企業と顧客に働く心理なのです。「愛されたければ、愛しなさい」という名言がありますが、顧客から愛されたければ、まず顧客を愛しなさいということになります。

 

 

良質な顧客との関係を築く顧客満足

マーケティングでは、顧客満足に取り組む理由は経営効率を高めるためだと説明され、顧客をロイヤル・カスタマーに育成することの重要性が提言されています。

 

顧客は、見込み客、新規顧客、リピーター、クライアント、ロイヤル・カスタマーに分けられます。この中でも、ロイヤル・カスタマーが重要だとされています。ロイヤル・カスタマーとは会社や商品に対する忠誠心(ロイヤリティ)が高い顧客のことです。別な言い方をすれば、ロイヤル・カスタマーこそ満足した顧客の姿でもあります。

 

マーケティングの代表的な研究者である恩藏直人氏は「20対80の法則でも、上位20%の顧客によって、企業全体の利益の80%がもたらされている*1」とロイヤル・カスタマーの重要さ指摘しています。また、「平均的に企業は、毎年10%もの顧客を失っている。(中略)顧客が失われる割合『顧客の離反率』を下げることが重視されるようになってきている*2」と述べています。

これらのことから、ロイヤル・カスタマーをたくさん保有することで、経営効率が高くなるということになります。そして、これらの課題を解決する手段として、顧客満足が有効だと同氏は述べています。

 

これらのことは、企業サイドの一方的な都合を示すものですが、顧客満足企業の事例を見ると、顧客から利益を吸い取るという関係より、企業と顧客の関係は互恵的であるケースが目を引きます。従業員たちは、顧客に喜ばれることをやり甲斐にしており、従業員の「顧客に喜んでもらいたい」という行動が「顧客の喜び」を呼び、その喜びを見て、従業員の「さらに頑張ろう」しいう心理が働き、従業員のレベルが上がります。ここでも返報性のルールが働き、このようなプラスのスパイラルにより、顧客との関係が深まって、顧客はロイヤル・カスタマー化していくのです。

 

BtoB企業での特殊要因

顧客満足企業はたくさんありますが、BtoCつまり顧客を個人とするケースがほとんどです。実は、BtoBにおける顧客満足というのはBtoCとは異なるのです。BtoCでは個人がターゲットですから、顧客個人への対応が重要です。これに対して、BtoBにおいては、会社がターゲットであり、会社のトップやキーパーソンに満足してもらうことが重要になり、会社を挙げての対応が求められます。また、会社のトップやキーパーソンの意識は経営課題に向いていますので、顧客企業の経営課題を解決することで返報性のルールが働き、顧客満足を実現する手段となります。ですから、会社の窮地を救うことや会社の業績を上げることに貢献すること、つまり、カスタマー・サクセスの考え方が重要になってきます。

 

 

BtoB企業での顧客感動の事例

そのようなBtoB企業の顧客満足/カスタマー・サクセスの事例を紹介しましょう。機械メーカーのA社の社長の経営哲学は「顧客感動」でした。満足以上の感動を届けるという意味です。

 

それは、顧客企業の窮地を救う取組みでした。

A社は、生産機械のメーカーで、日本全国に顧客ユーザーがありましたが、顧客の業界は地震や水害のときの機械の修理に悩まされていました。

始めは、阪神淡路大震災のときでした。震災が発生してすぐに、被災地に入り機械の復旧に当たりました。この出来事が業界に高く評価されました。そして、このノウハウを活かし、その後の台風・大豪雨や地震でも、被災地を訪問して被災した機械の点検や修理を行ったのでした。機械は、水につかってしまったり、上から照明器具や天井が落ちてきたりすると、全く使えない状態になってしまいます。このような状況を目にすると、顧客は仕事や生活の見通しが立たなくなって絶望してしまいます。そのようなときに、A社のサービス部隊が到着して、機械の点検や修理をしてくれるのです。もちろん水と食料も持ち込みますので、心強くなり希望が湧いてきます。涙を流して喜ぶ顧客もいました。顧客に感動も届けたのです。

 

このようにして、A社のロイヤル・カスタマーの数は増えていきました。そして、国内シェアも伸びていきました。しかし、何より重要なのは顧客との絆が強まったことでした。

 

まとめ

企業の目的は儲けだけではありません。特に、BtoB企業においては、顧客企業の発展(カスタマー・サクセス)がなければ自社の発展はありえません。また、顧客の求めるものを提供していく必要がありますが、顧客の最大のニーズとは、会社が発展することです。従って、BtoB企業は顧客の発展に如何に尽力できるかが最大の課題なのです。BtoB企業は顧客の成功があってこそ発展していくのです。

 

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参照

[1]「マーケティング論」恩藏直人著 P.26
[2]「マーケティング論」恩藏直人著 P.24