2019/07/11

チームマネジメントのビジョンは顧客満足であってはならない

Googleは、マネージャーの行動規範として「明確なビジョンと戦略を持ち、チームと共有する」を挙げています。

 

多くの現場において、仕事はチームで実行されます。そこで大切になってくるのがビジョンです。経営において、ビジョンは経営理念の次に来る重要な項目です。経営理念、ビジョン、戦略、戦術、実際の戦闘が行われます。[1]

チームリーダーやマネージャーの仕事を考えるとき、まっさきに重要になってくるのがこのビジョンです。経営理念は社長が考えますので、では、マネージャーはどのようにしてこのビジョンを定義し、戦略・戦術・戦闘へと落とし込むべきなのでしょうか。今回は、チームのビジョンについて考えていきましょう。

 

Googleのチームメイクの話

Googleは、彼らの働き方の理念そのものを外部に公開しています。reWorkというサイトがそれで、reWorkでは、チームメイクの話が掲載されています。

 

○ビジョンはチームの成功に不可欠である
○チームメンバーは自分たちがどこに向かっているのかを知る必要がある
○ビジョンは、チームがやるべきことを決める際に役立つ

という定義がなされています。[2]

つまり、チームメイクにはビジョンこそがもっとも大切だという話です。

 

マネージャーこそがビジョンを策定すべきでしょう。ビジョンは自然発生的に、下から上にボトムアップであがってくるものではないからです。高らかにビジョンを宣言し、リーダーシップでメンバーを導いていく必要があります。

 

顧客満足という誤ったビジョン

多くの会社において、このビジョンは「顧客満足」と定められます。しかし、顧客満足は果たしてビジョンとして正しいのでしょうか。違うと考えられます。なぜなら、顧客満足は上限がなく、果てしないサービス残業を生むからです。

 

お客様の気持ちを満足させる。そこに主眼をおいたプロジェクトマネジメントは必ず赤字になります。気持ちには満足といったものがなく、品質に妥協を許さない顧客は、金銭面での折り合いがつかず、プロジェクト炎上を招くからです。

 

こだわりが強く、品質に妥協を許さない仕事を求める気持ちは、十分理解できます。また同時に、そのこだわりこそが、メイド・イン・ジャパンのクオリティの源泉ともなってきたでしょう。しかし、重要なのは金銭面がそれにおいつかないことです。

 

青天井に残業代を払ってくれる顧客ならまだわかりますが、多くの場合において、追加予算は払わないけれど、品質には妥協したくないというケースが多いのです。そして、チームがそこに従ってしまうのは、ひとえにこの「顧客満足」をビジョンとして設定しているからに尽きます。

 

チームのビジョンはメンバー自身の成長

顧客満足という、お客様の脳内をチームビジョンに設定する必要はないと考えます。チームのビジョンは、メンバー自身の成長に定めるべきで、成長は自分自身の脳内にあるものです。何か価値観が強化されるとか、直感的に考えていた仕事上のあるべき論とか、そういったものが確信に変わる、でもいいでしょう。それそのものが成長だからです。

 

厳密には、メンバー自身の成長は、顧客満足のより上位のレベルに位置する目標だと考えられます。マネージャーは、そこまで導いていかなくてはならないのです。

 

なぜメンバー自身の成長が必要なのでしょうか。

 

それは、顧客満足をビジョンに設定していたら、チームを卒業し、組織を退職すればそれは消えてなくなるものだからです。顧客満足は、会社が社員を守り、雇用を維持するために必要なビジョンでしたが、現在ではもう通用しません。

 

そもそも、解雇規制があった日本型雇用においては、この顧客満足こそが品質を生み出し、クリエイティブの源泉になっていたことは事実です。しかし、もう雇用が崩れて、グローバルスタンダードになりつつある今では、この顧客満足は果てしないサービス残業・ブラック労働という形で表出します。

 

組織が守ってくれないのなら、自分で身を護る方法を身につけなければなりません。プロジェクトが終わったらチームは解散となり、メンバーもまた散り散りになります。しかし、その仕事を通じてスキルを身につけてワンランク上の自分になっていたら、次のプロジェクトでも活躍できますし、また少し休んだとしても、復活できるでしょう。

 

副業・複業が解禁となり、会社はもう守ってくれません。また、定年まで働けたとしても、すべての人がいつか会社を退職します。それならば、会社にいる間に、看板が通用する間に、自分がその後も生き延びる術を身につけるのが大切ではないでしょうか。

 

顧客の意見を聞かないという意見

第一線で働くストラテジストの本『素人の顧客の意見は聞くな』(永江一石 著)では、文字通り、顧客の意見を聞かないという意見が展開されています。[3]たとえば、IT業界を考えてみるとき、受託する開発会社は顧客の言いなりになったシステムを納品しがちです。それは、顧客満足が明に暗に、ビジョンとなってしまっているからではないでしょうか。

 

顧客と意見が衝突するというリスクを回避して、言いなりのシステムを作った結果、日本には低品質でユーザーの方を向いていないサービスがごまんと生まれています。よって、発注元の意見を聞く必要はないのです。

 

自分の意見を無視されると、お客様は憤慨されるでしょう。しかし、結果がついてくるのであれば、手のひらを返して称賛してくれる、本にはそのことが書かれています。

 

お客様の言いなりに、願望どおりにならないことでも、相手の耳が痛いことでも、ご助言する、その姿勢こそが大切なのではないでしょうか。

 

たとえば、自分の話で恐縮ですが、筆者もイエス・ノーは割とはっきりいうタイプです。商談の場において、お客様が「Webサイトにショッピングカートをつけたい」といわれても、「EC機能はセキュリティの問題が生じるので、外部の機能を借りたほうがよいと考えます」「何百万、何千万も開発費がかかりますので、お金を捨てるだけになります」というケースはよくあります。

 

それだけ、お客様はサイトの素人であり、同時に誤った目標設定をしがちだからです。それを、正していくというとおこがましいですが、より確実なパフォーマンスがでる方向に導いていく、それも仕事のあり方だと考えています。

 

素人の顧客の意見は聞くな。つまり、正しい方向に導いていくことで、筆者は話し合いを重んじ、要望をしっかり聞いた上で、それでも違うと思ったことははっきり言うようにしています。

 

それが結果として、信頼につながり、より多くの受注につながっていますので、今のところは間違っていないようです。

 

まとめ

プロジェクトは期間限定のものであり、目的を達したらあとは解散することが多いでしょう。しかし、マネージャーはその後もチームメンバーが生き残れるスキルを身につけられるよう育てる責任も背負っていると意識しなければなりません。だからこその、権限と役職と報酬なのです。

 

それなのであれば、顧客満足というビジョンは破棄し、自分たちの成長、チームの成長を第一義におくべきではないでしょうか。仕事とは、究極的には自己満足です。その満足のレベルを高い位置に設定し、視座を高めていく。それこそが、マネージャーが引っ張っていく上での欠かせないビジョンだと考えられます。

 

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筆者:名もなきライター


参照

[1]「経営理念・ビジョンと戦略の関係」 経営を学ぶ
http://keiei-manabu.com/strategy/management-philosophy.html
[2]
Googleのチームメイクの話
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/managers-set-and-communicate-a-team-vision/steps/introduction/
[3]『素人の顧客の意見は聞くな』(永江一石 著)