2019/07/23

法令遵守だけでは間違う、今のコンプライアンス

私たちは、いくつもの企業が不祥事を起こし、経営トップがテレビカメラの前で深々と頭を下げる光景を目にしてきました。

そしてその多くで、「コンプライアンスに問題があった」という説明がされます。

 

コンプライアンスは多くの企業研修の必須科目になっているにも関わらず、なぜこのような事件が後を絶たないのでしょうか。

 

筆者はIT企業の内部管理者として、全社規模のコンプライアンス研修を実施した経験があります。

また講師として教壇に立つこともありましたが、受講者のモチベーションの低さを常に感じていました。

 

コンプライアンス(compliance)は動詞のコンプライ(comply)の名詞形で、元々の意味は「(何かに)応じる、従う、守る」です。日本語でこの語が用いられるのは、主にビジネスや経営の分野で、企業の場合、文字通りに解釈すると「法律や条例などの法令を遵守すること」「法令遵守」となります。

 

このような話をすると、「そんなのわかってるよ、あたりまえだろ」という反応をされました。

つまりコンプライアンスとは、法令遵守を徹底したうえで、日々のビジネスを進めれば問題は起きないという意識が共通認識になっていると言えます。

確かに、最近起きた企業の不祥事の多くではなんらかの法令に違反しており、責任者が刑事責任を問われたこともあります。

 

しかし、それだけではコンプライアンスとして十分ではないのです。「コンプライアンス」と「法令遵守」のちがい、そして、企業はコンプライアンスにより多くが求められている現状とその対応についてご紹介します。

 

コンプライアンスと法令遵守のちがいが露わになった事例

最も顕著な例は、数年前の大手パソコン販売会社の炎上事件です。

 

80代の認知症を患った独居老人が、パソコン修理の依頼時に毎月1万5000円の支払いを伴うサポートサービスを契約し、状況を知った家族が解約を申し出たところ、10万円の解約料を請求されたというものです。

 

サポートサービスは、当該パソコン販売会社がパソコンやスマートフォンなどの設定、点検、修理などの幅広いサポートを提供するもので、デジタル機器の取り扱いに苦労する中高年層を中心に多くの会員を獲得し、同社の主力事業のひとつとなっていました。 

 

この問題は、家族のツイッターへの投稿から始まり、テレビの情報番組などで多数取り上げられ、判断力の鈍ったお年寄りを誤認誘導して売上げをあげたのではないかとの疑いもあり、高額な解約料とともに当該パソコン販売会社は批判を浴びました。

 

当初、同社は、適法に対応しており問題は無く、クレーマーによる批判に対応しているという姿勢を取ったことが火に油を注ぐ形になりました。批判は止まず、同サービスの解約が相次ぐとともに、同社の株価は1か月で半分以下に急落しました。

 

確かに、問題の契約には法令違反はありませんでした。しかし、法令違反がなければいいだろうという同社の対応は、社会的に許容されるものではなかったのです。

 

もうひとつの例は、この十数年の間にたびたび問題となる、生命保険会社の不適切販売です。

 

生命保険会社の営業員の報酬は、獲得した契約の多寡とその種類に基づいて支払われることから、一部の営業員たちが自らの報酬を増やすために、金融リテラシーの低い顧客に、顧客の不利益になる契約をさせていたというものです。

 

営業員は法令並びに所属会社の規則で定められた書類を顧客(契約者)に渡して、契約内容についての説明を行い、顧客の意思で署名捺印して契約が成立しているので、ここでもやはり法令違反はありませんでした。

 

しかし、この問題を起こした生命保険会社は社会的な非難を浴び、問題とされた契約のみならず他の契約も含めて、契約が希望に沿うものであったかの意思の確認をするという多大な作業を行わざるをえなくなり、業績に大きなマイナスの影響を及ぼしました。

 

この2つの例では、顧客に適合したサービスを提供とするというビジネスの基本からの逸脱もコンプライアンス上の問題とされたのです。コンプライアンスと法令遵守のちがいです。

 

コンプライアンスと法令遵守のちがいの背景にあるもの

「コンプライアンス=法令遵守」の考え方は、1980年代から2000年代の初めにかけて、全世界的に支配的になった新自由主義の一端を担っていました。

 

法令の枠内で自由にビジネスを展開し、収益を極大化し、株主の付託に応えるのが企業の使命であるということです。

 

この考え方に基づいて、各国では規制緩和が進められ、企業の活動の自由度を高めることが企業単体の利益拡大だけでなく、最終的には国民全体の利益に増進につながると信じられていました。

 

ところが、2000年代に入って風向きが変わりはじめました。

 

先進諸国全般で経済成長率が慢性的に下がり始め、国民に分配できるパイが減ったことから、国内での経済格差が目立つようになると、企業の独善的な利益追求に批判の目が向けられるようになったのです。

 

企業は社会の一部であり、利益追求を行うだけでなく、社会に対しても責任ある存在でなくてはならないという「企業の社会的責任」に基づいて、法令だけでなく社会的規範や企業倫理を守ることまでが重視されるようになりました。

 

CSR(企業の社会的責任)が一般的に使われる用語となり、企業の評価や投資の意思決定にあたって、SGI(社会的責任投資)、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資)が重視されるようになりました。

 

最近の辞書ではコンプライアンスの定義も変わっています。

 

「法律や社会的な通念を守ること。法令順守と訳されることが多い。」

 https://kotobank.jp/word/コンプライアンス-3575

 

企業が守るべきは法律と限定されなくなったのです。

 

コンプライアンス違反を犯さないために

企業経営においてコンプライアンス重視が頻繁に口にされる昨今、コンプライアンスに関わる体制の充実が進んでいます。

 

コンプライアンスの遵守状況をチェックする部門が設けられたり、全社員の出席を必須とする社内研修を実施したり、全社員のみならず企業の活動に係る協力会社の社員も含めてコンプライアンスについての誓約書に署名捺印を求めたりの対応が取られています。

 

この成果もあってか、最近では、企業の社員が意図的に法令違反を起こす例は少なくなっています。

 

しかし、体制を充実させても、それを動かす社員がうっかり違反を起こせば、コンプライアンスの問題となってしまいます。仏作って魂入れずということです。

 

その「うっかり」は、意識に刷り込まれた「コンプライアンス=法令遵守」と、「法令には違反していないのだから、これくらいならいいだろう」という気の緩みの2つがあいまって起きてしまいます。

 

「コンプライアンス≠法令遵守」は企業研修のコンテンツとして徐々に取り入れられつつありますが、現場のマネジメント層は日常の業務の中で、自社の活動のひとつひとつが社会的責任や企業倫理に反することはないかを絶えず自問する必要があります。

 

「これくらいはいいか」の意識は、仕事に慣れてくると不可避的に芽生えてしまいがちです。例えば、職場の電子メールを私用で使う、SNSで仕事のことを書いてしまう、残った仕事を家でやろうとデータを持ち出したといったことです。

 

現場のマネジメント層は、自らの管理範囲でこのようなことが起きていないかを日常業務の中で常に気を配る必要があります。

 

まとめ

企業の経営者やコンプライアンスを管理する部署では、昨今の企業を取り巻く環境変化が反映されたコンプライアンスの求めるものの変化が認識されるようになっているものの、企業活動を現場で遂行するマネジメント層の意識の中で、コンプライアンスが文字通りの法令順守にとどまっているのが繰り返して起きる不祥事の要因のひとつです。

 

守っていても社員個人の業績のアップにつながらないコンプライアンスには、やらされ感をもって取り組むことになりがちですが、上記2つの例のように、ひとたび問題を起こすと、企業の屋台骨を揺るがす事態になってしまう可能性もあります。

 

現場のマネジメント層は、法令と社内ルールをバカ正直なくらいに遵守するとともに、自らの仕事の成果がいかにして社会の要請に応えているかを常に意識しながら日常の業務を行うことが、自らの業績とともに企業全体の業績を伸ばしていくことにつながります。

 

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