2019/07/30

マネジメント業務に大切な心構えの為に「ノブレス・オブリージュとは」

マネジメント業務では、目標設定、組織運営、問題発生時の対応など様々な能力が求められます。それらの能力だけでなく、同時に人間性も求められます。ドラッガーの著書では「真摯さ(integrity)」という表現で、この重要性を説いています。「真摯さ」と言われても、抽象的で何をすれば良いのか分かりにくいですよね。

そこで今回は、「真摯さ」を具現化するために、ノブレス・オブリージュの意味と実践例を紹介します。

 

マネジメントに必要な力と資質

ドラッカーの『マネジメント 基本と原則』には、マネジメントに必要な能力が述べられています。

・目標を設定する能力

・組織化する能力

・コミュニケーション能力

・評価測定能力

・問題解決能力

これらの能力に加えて、マネージャーの資質として「真摯さ(integrity)」の大切さが繰り返し説明されています。

 

「真摯である」ということとはどういう事でしょうか。昨今、企業の不祥事による記者会見が多いですが、社長や経営陣の対応を見ていると、残念ながら反面教師の事例が多い状況です。

 

人は「情」に左右される生き物です。つまり顧客、部下など周りの人の意志に働きかける際に大切になるのが「真摯さ」です。例えば、いくら能力が高くても、意志が弱いとアウトプットが小さくなると考えれば分かりやすいのではないでしょうか。そのために発信者である自分自身の意志を伝えるために「真摯さ」は重要になってきます。

 

その観点で、「真摯さ」とは、

「人として正しい意思決定と行動を当事者意識と覚悟を持って行う」

ことによる現れであり、同時に

「共に働く人たちへの模範となる」

ことを可能にする効果があります。

 

その「真摯さ」を実践するために、「ノブレス・オブリージュ」について考えてみましょう。

 

ノブレス・オブリージュとは

ノブレス・オブリージュを説明する前に、著名な経営者のコメントを紹介します。

 

元伊藤忠商事社長 元駐中国大使 丹羽宇一郎氏

 

ノブレス・オブリージュは、昔の騎士道にも通じる考え方で、リーダーには「社会のためならわが身を投げ出すこともいとわない」覚悟が求められる、ということです。国にしても企業にしても、トップたる者は公人としての心構えを持たなければなりません。あるときは私人としての権利も、また自分自身や家族をも犠牲にしなければならないことがあるかもしれません。そうした覚悟がない人はトップになってはいけません。[1]

 

慶應義塾元塾長 中央教育審議会元会長 鳥居泰彦氏
(文化学園大学理事長・学長、日本私立大学協会会長 大沼淳が出版した本の推薦文より)

 

戦後すでに70年になろうとする日本は、今や大きな曲がり角にある。社会が大きく変化するなか、とりわけ、「日本人としての心の持ち方」が、問われている時代といっていい。現文化学園大学理事長・学長であり、日本私立大学協会会長を務める大沼淳氏は、いま「日本人にとって」大切な心の持ち方は「ノブレス・オブリージュの精神だ」と考える。それはすなわち「リーダーは常に世のため人のためにあれ」ともいえ、リーダーたる者のもつべき自覚の大切さを訴える。[3]

 

イオンフォレスト社長(元 スターバックスジャパンCEO) 岩田松雄氏


「ノブレス・オブリージュ」は、「位高ければ徳高きを要す」、あるいは「地位の高い人の義務」と訳されます。地位の高い人は、それに相応しい徳の高さや自己犠牲の精神を持たなければいけないということです。私は、やはり徳の高い人がトップに立ち、そのうえで頭の切れる参謀が傍で支えるというスタイルが理想と考えています。かつての日本の優秀な組織は、まさに優秀なリーダーの下に、優秀な参謀がいるという形が多かったと思います。[3]

 

京セラ・第二電電創業者 稲盛和夫氏


(リーダーには)偽りがあってはいけない、私心があってはいけない、わがままであってはいけない、奢りの心があってはいけない。そうした高潔な生き方をおのれに課すこと。これが人の上に立つものの義務、すなわち、ノブレス・オブリージュというものでしょう。[4]

 

以下に「ノブレス・オブリージュ」の意味と、本記事で取り上げた理由を説明します。

 

一般的に「財産、権力、社会的地位を持つものは社会的義務が伴う」という意味です。元々は西洋貴族等への啓蒙として、自発的な無私の行動を促す言葉です。「財産、権力、社会的地位」というものは、自分自身の能力ではなく、社会から与えられたものであるから、自己を犠牲にしてでも果たすべき社会的義務があるという考えです。

 

会社内で経営者・管理者の方々には、「地位」とそれに伴う「職権」を与えられています。収入も部下より多いでしょう。ノブレス・オブリージュの考えに基づけば、与えられた力を活用して、会社・組織に還元する義務があると考えることができます。

 

ノブレス・オブリージュの実践により、マネジメントに必要な資質である「真摯さ」の具現化につながると思います。

 

ノブレス・オブリージュの実践例

マネジメント業務を行う貴方がノブレス・オブリージュの実践を考える際、もっとも直接的で分かりやすい還元先は、顧客、及び部下ではないでしょうか。

 

まずは難しく考える必要はなく、当たり前の事を純粋な気持ちで実行することを考えてみましょう。簡単な事を継続的に行うことが実は難しいものです。以下に、部課長レベルのマネジメント層における事例を紹介します。

 

顧客に対して

・部下の行動によって発生したトラブルが発生した場合、自分に原因があると”心から”思い、時間を空けずに自ら謝罪に出向くよう心掛ける。

・トラブル解決に向けて、部下から顧客への報告に加えて、上司(自分)からも定期的な連絡を行う。この行動により、顧客の心情を自部門にフィードバックできる。

 

部下に対して

・部下とのコミュニケーションを円滑に行うため、部下が話しやすい雰囲気・時間を作ることに努力して実践する。

上司も忙しいのが実情ですが、それは正当性のある理由になりません。

・部下が直面している”現場”を正確に把握する。「百聞は一見に如かず」の通り、言葉や文章での報告では、部下が遭遇している現場に関する僅かな情報しか伝わらない。部下が置かれている状況を共有し、必要に応じて権限を委譲する。なお、権限を委譲しても責任は上司がとる。

・部下が仕事の進め方を迷っている場合に対して、アシストを行える準備を怠らない。具体的に次の一手を少しだけやってみせるのも有効。

・部下に対して謙虚な気持ちで接する。この気持ちに基づき、部下が安心して仕事を行える環境を考え構築する。部下が上司である自分の指示に従って行動するのを当たり前と思わず、感謝の気持ちを持つ。それに伴った思いやりの言動も大切。

・自分自身の心情をコントロールする習慣をつける。特に「我欲を出さない」、「怒りを出さない」、「愚痴を言わない」に留意すべきです。1日の最後に、自分自身の言動に対して反省する習慣をつけるのも効果的。

 

これらを実際にやってみると、自分は部下に奉仕している感覚となります。でも、それくらいで良いと思います。「やってやる」と気持ちではなく、「やることが当たり前」と考える、まさにノブレス・オブリージュの実践です。

 

上記の事例を継続すると、上司と部下の間に自ずと信頼関係が形成されます。すると、上司である自分を部下が助けてくれる場面も増えてきます。

 

昭和の名経営者の一人である土光敏夫氏は、石川島重工業(後の石川島播磨重工業、現IHI)や東芝を経営危機から再建し、日本経済団体連合会(経団連)の会長として活躍された方です。その方のコメントも参考になります。

「幹部は権限もあるが、これは振り回さないほうがよい。できるだけ委譲するほうがよい。そうすると残るのは、責任ばかりだ。…だから経営者や幹部は、ほんとうはつらい人なのである。割に合わない商売なのだ。」

 

まとめ

会社のマネジメント業務を行う経営者や管理職には、業務を遂行する能力だけでなく、「真摯さ」が大切です。しかし、「真摯さ」を行動で示すには思想なり哲学が必要です。そこで、本記事ではノブレス・オブリージュを提案し、部課長レベルのマネジメント層における事例を紹介しました。本記事を参考にして、貴方のノブレス・オブリージュを考えてみては如何でしょうか。もしかしたら、学校の道徳で習うような案が挙がるかもしれません。内容は簡単でも実践して継続するのが難しいものです。

 

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参照

[1]宣伝会議「勇気ある広報の存在が、日本企業を「知の衰退」から救う」
https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201707/management-and-pr/010865.php
[2]学芸みらい社「ノブレス・オブリージュの「こころ」―“リーダーは世のため人のためにあれ”」
http://www.gakugeimirai.jp/archives/2326
[3]アルファポリス「リーダーに求めらられるものとは-14」
https://www.alphapolis.co.jp/business/official/iwata/155
[4]「生き方―人間として一番大切なこと」稲盛和夫著   第3章の「つねに内省せよ、人格を磨くことを忘れるな」より抜粋