2019/09/18

ビジネスでは「先に相手を信頼せよ」

ビジネスのコミュニケーションでは、相手をある程度信頼することが必要です。しかし、「本当に信頼できるのか」を見極めることは簡単ではありません。特に初対面の会社や組織との間では腹の探り合いになりやすいものです。バーチャルな世界での取引が増えてきた昨今、どうやって信頼できる相手を探し、コミュニケーションすればいいのでしょうか。

 

部下を信頼しない上司はうまくいかない!?

コミュニケーションを成功させるには、相手をまず信頼することだ、と語るのは、マレーシア大富豪と呼ばれるテクスケム・リソーセズの小西史彦会長です。1973年、マレーシアのペナン島で、商社を起業し、現在はマレーシア政府から称号を付与されるほどになりました。

彼は、相手から「信頼されてない」と感じるとき、人は深い悲しみを覚える」と語っています。彼はシンガポールで、猜疑心の強い華僑のリーダーから学んだ経験を、このように話しています。

だから、経験の足りない若い頃は、安易に人を信頼すると痛い目にあうこともあるでしょう。私だって、そうでした。シンガポール商社の華僑ボスには痛い目にあわされた(連載第7回参照)。でも、あのとき、私はひとつ大事なことを彼に教えてもらったと、いまは思っています。
何を学んだのか?
人を信頼することの大切さです。
彼は部下である私を信頼することができない人間でした。取引先に渡すリベートを私が横領するかもしれない、と考えた。これに、部下である私はひどく落胆(らくたん)したものです。相手から信頼されていないと感じたときに、人間は深い悲しみを感じるものなのです。(*1)

仕事とは、結局のところ人間関係なので、信頼関係が物を言います。小西さんの言うように、社内に不信が蔓延する会社では、人は悲しみを感じ、実力が発揮できないこともあります。

アジアのビジネスではもちろんのこと、日本人同士でも結局のところは同じ。今流行りのリモート・ワークなども、基本的に部下を信頼していないとできないワークスタイルです。

相手を信頼できないと仕事が遅延する理由とは

相手を信頼できないとどうなるか。

すると、マニュアルがどんどん厚くなり、決まり事が増えていきます。何度も確認したり、念押ししたりすることになるため、仕事自体のスピードが遅くなっていきます。お互いを信頼しないままの取引はモチベーションにも大きく影響するでしょう。

社会心理学者の山岸俊男さんは『安心社会から信頼社会へ』(中公新書)で、お役所仕事が煩雑になるのは「国民の不信」が原因だと書いています。

一般的にお役所仕事は非効率の典型とされています。しかしこの例からもわかるように、お役所仕事の非効率さが、無数の煩雑な規則によって矯正されている点も見逃すべきではありません。そして同時に理解しなくてはならないのは、お役所仕事を非効率的にしているこれらの規則が、究極的には役人に対する国民の不信から生まれたという点です。(*2)

信頼する前に、信頼せよ

では、この煩雑さをなくし、信頼をベースにするにはどうするか。
小西さんは「信頼される前に、信頼せよ」と言っています。

“I trust you, before you trust me.”
これが、私の信条です。「あなたが私を信頼する前に、私はあなたを信頼する」。この言葉を胸に日々のビジネスに向き合っています。(*3)

先の山岸先生の本でも、「他人を信頼する人の方が裏切られにくい」という不思議な実験結果も紹介されています。基本的に信頼を繰り返しているうちに、他人を見る目が養われる、ということです。

相手が信頼に値するかをどう見分けるのか

とは言っても、「先に信頼ばかりしていたら、騙されるのでは」と心配する人は多いでしょう。ではどうやって信頼に値する人を見つけるのか。小西さんはこう続けます。

もちろん、この言葉を発する前には、じっくりと人物を見極めます。誠実であるか? 礼儀正しいか? ビジネスのことがわかっているか? 実力はあるか? あらゆる観点から観察します。そして、その人物の言動を総合的に見たうえで判断をするわけです。
これは、理性的な判断というよりは、むしろ動物的な勘というほうがふさわしいでしょう。(中略)
しかし、歳とともに人間を見極める力が身につくとは言っても、そのためには条件があります。当たり前のことですが、人を信頼する経験をすることです。(*4)

「人物の言動を総合的に見たうえで判断をする」とても難しいですが、経験によって、だんだん「動物的なカン」が研ぎ澄まされていく。要するに、失敗しながら学んでいくしかないのです。

私もマレーシアで PRやメディアの仕事をプロジェクトベースでしています。大抵は一期一会の関係なので、相手にいかに信頼されるか、信頼するかが仕事のスピードを決めます。外国人との間では契約書を交わしますが、信頼ができないと、いちいち、書類が分厚くなっていきます。

そこで、小西さんが言うように、人物の見極めが必要になるのです。

私自身も仕事をしていて、相手とのコミュニケーションでの「ちょっとした違和感」に、違和感を覚えることがあります。ふと漏らした取引先への悪口や、ビジネスの話、レストランのウエイトレスに対する態度などから、相手を観察するわけです。マレーシアではビジネスミーティングでお茶やお菓子を楽しみながら、談笑するケースが多いですが、実はこうやって談笑しながら、相手を見極めています。
この違和感は「相手を信頼し、信頼した経験を重ねる」ことによって、培われていくと小西さんは説いています。
小西さんは同時に、「お客様に対する姿勢を見よう」と提言しています。

ビジネスとは、お客様に喜んでもらうから成立するものです。そして、そのために、力を合わせるのがビジネス・パートナーです。だから、お客様に対する「姿勢」が正しい人は、ビジネス・パートナーとして信頼できるのです。(*4)

まとめ

グローバルな時代となり、相手と一度も会わずに仕事をしたり、違う文化圏の人と働くケースがこれからいよいよ増えていきます。そのときには「相手をいかに(素早い判断で)信頼するか」が重要になります。小西さんの言う「動物的カン」を磨くためには、たくさん信頼して、失敗から少しずつ学んでいくのが、実は一番の早道かもしれません。

筆者:のもときょうこ
早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。その後フリー。著書に「日本人には「やめる練習」が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。マレーシアマガジン編集長。

 

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[1]ダイヤモンド・オンライン「“成功する人”と“失敗する人”は、「これ」を見れば分かるマレーシア大富豪の教え」
https://diamond.jp/articles/-/127190
[2]『安心社会から信頼社会へ』山岸俊男(中公新書)
[3ダイヤモンド・オンライン「“成功する人”と“失敗する人”は、「これ」を見れば分かるマレーシア大富豪の教え」
https://diamond.jp/articles/-/127190?page=2
[4]ダイヤモンド・オンライン「“成功する人”と“失敗する人”は、「これ」を見れば分かるマレーシア大富豪の教え」