2019/10/17

「対面神話」を捨てよ。コミュニケーションの「本来の意味」を認識すれば、話は的確かつシンプルになる

社内のコミュニケーションに「課題がある」とする企業はとても多い。

 

具体的な要因としては、「報告・連絡・相談」の不足、個人のスキルの低下、説明能力の不足、など複数が挙がっているため、何からどう改善できるかわからなくなっているマネジメントも多いのではないだろうか。

 

ただ、コミュニケーションの本来の意味と目的を考えれば、物事はもっとシンプルになるはずだ。

 

7割が「コミュニケーションに課題あり」

NHK放送研修センターが行った「ビジネス・コミュニケーション調査」[1]によると、

 

「社内のコミュニケーションに課題がありますか」との質問に対して、

 

「ある」と答えている企業が71%、「どちらともいえない」が25%、「ない」は4%だった。

 

具体的に「社員」の課題になっていることは、

 

「報告・連絡・相談が不足している」   60%

「相手の本音やニーズを聞き出せない」  40%

「筋道立てて考えを話すことができない」 37%

 

「社内」の課題になっていることは、

 

「個人のコミュニケーションスキルの低下」    64%

「対面コミュニケーションの減少」        64%

「業務が多忙で会議や話し合いの機会が持てない」 36%

 

といったものである。

 

また、メールやチャットツールがメインのコミュニケーションが増え、「いつでも気軽に送れる」反面、「細かいニュアンスが伝わりにくい」という悩みもあるようだ。

 

論理的に物事を考える力と、対面で細かいニュアンスを汲み取って欲しい、というところに集約されるだろう。

 

分単位の勝負をしていた頃の話

ここで、「何のためのコミュニケーションなのか」を改めて考えてみたい。

 

このアンケートでは、「情報や組織目標を共有するため」というのが79%である。

 

実際に考えてみても、「業務を達成するため」に必要なのがコミュニケーションであることは間違いない。

 

筆者は大手放送局で、ニュース番組のディレクターをしていたことがある。

 

チームワークの目標はとにかく「時間までに取材を済ませ、VTRを完成させ、オンエアにすること」に尽きる。

 

夕方のニュースに向けて、午後イチになって「このニュースを掘り下げて、3分のVTRに展開して欲しい」という発注を受けることが多々あった。

 

まず後輩を現場に送り込む。と言っても、場合によっては、そこから取材先を探し、交渉するところから始まる。

 

そして取材先を決定し、カメラクルーの手配をし、各々の情報と映像を本社で引き受けて原稿にまとめ、編集するのが私の役割である。

 

要領の良い記者であれば、もしくは現場が大きく動くことがなければ話はスムーズで、作業に余裕もできる。

 

しかし、現場は生き物である。

 

思惑が外れたり、状況が変化すれば、ギリギリまで最新の情報、映像を入れ込む必要がある。10分前に撮影したものを押し込むこともある。

 

情報は基本、電話で受け取る。

 

映像の送り方は様々で、生中継を本社で収録したものや、一定の映像を確保したのち、マイクロ波などで伝送するもの。

 

しかし、伝送車だって無限にあるわけではない。

 

中には、当時なら、近距離や優先順位の低い(使用するカットが少ない)現場であれば、取材テープをバイク便で運ぶというものもある。

 

現場の記者は自分のタイミングで全て本社に送ってくるが、受け取る側としてはバラバラに報告される情報、バラバラに届く映像をその都度受け取りながら原稿化する。

 

場合によっては、記者を現地に残したまま、カメラマンから連絡が来て映像の伝送時間を伝えてくる、ということもある。

 

さらには、編集マンや、必要に応じて図解用のCGを作る部署ともコミュニケーションを取らなければならない。

 

そして、全てが分単位の勝負である。

 

逆算で考えるコミュニケーションの方法

このようなとき、チームとしてのコミュニケーションは、次の順序に集約される。

 

取材開始前は、

 

1)最終目的の共有(何のためにこの項目を扱うのか、オンエアは何時何分かを全員で共有)

 

2)全体態勢の共有(誰がどこで、どんな要素の何を取材しているかを全員で共有)

 

それぞれの取材先に出向いてからは、

 

3)最低限だけの報告

 

そして、多くのマネジメントが感じているように、3)が苦手な若者が多い。

 

しかし全員の報告をいちいちダラダラと受けていたら、原稿の執筆や編集が間に合わなくなってしまう。

 

1人から5分話を聞くだけでも、20分程度を費やしてしまう。ニュースの世界では20分もあったらかなりの作業ができる。

 

その時に徹底したのが、報告が1分以上になりそうならば、

 

「つまり、原稿ではなんて書けばいいの?1分くらいの原稿にしてメールして」

 

である。

 

それを受け取って、必要に応じて私から電話する。

 

それ以外は「OK、早く帰ってきて」とだけ連絡する。

 

こちらはすでに編集作業に入っており、「VTRの完成」という目標から考えれば、編集マンとの会話の方がはるかに重要だからだ。

 

その上で、映像もダラダラとは送らせない。

 

必要なところ、つまり自分が原稿として書いた文章に合うものだけ送ってくればいい。

 

せいぜい長くても10分程度、中には10カットもあれば十分な現場もある。

 

相談があるなら、自分なりに考えた選択肢をせいぜい3つにまで絞ってから連絡させる。

 

そうでないと、私としても判断のしようがないからだ。

 

なぜこの方法が最短で最適なのか。

 

それは、この場合、VTRという最終製品から逆算した「最終的なアウトプット」は、「原稿の形を取った言語」と「的確な映像」で構成されるからだ。

 

だから、最初から「原稿」の形でコミュニケーションを取る。

 

そして、原稿に反映されないダラダラとした話し言葉や、使わないインタビューなど要らない。

 

それらは、目標達成から考えれば「余計な情報」でしかない。

 

そんなものは終わってから聞けば良いし、多くのマネジメントが好む「対面でのコミュニケーション」はその後に行ってこそ、お互い余裕を持って話し合える。

 

もちろん、頑張った成果をうまく反映してやれなかった時は、それこそ電話や対面でフォローする。

 

そして、次に活きれば良い。

 

これを繰り返すことで、現場で物事を判断する能力が身に付く。

 

まず結論から述べよ

コミュニケーションというのはつまるところ、「情報の共有」である。

 

そして情報というのには、「階層」が存在する。

 

頂点から言えば、

 

1)結論

2)結論を出すための情報

3)結論を出すための情報の情報

4)結論を出すための情報の情報の情報の・・・

 

合理的に、納得できる情報を共有したい場合、「結論」から報告させ、疑問があれば階層を下げていく。

 

下から拾っていたのではキリがないからだ。

 

すると、どこかで「それ以上は要らない」域に達する。必要かつ最低限の量のやりとりで済む。

 

極端な例えをすれば、

 

例えば、「2です」という結論があるとする。

 

結論を出すための情報としては「1+1」である。

 

結論を出すための情報の情報としては「これが1で、あちらが1だから」である。

 

結論を出すための情報の情報の情報としては「足し算というものが存在する」である。

 

結論を出すための情報の情報の情報の情報は「足し算の歴史」にまでなってしまう。

 

どの階層からの情報が必要なのかを判断できないため、伝え方・受け方が下手になるのだ。

 

この場合、「情報」というのは言語もそうだが、形、色、音のトーン、といった「非言語情報」も含まれる。

 

それを、最終アウトプットに近いところから、最終アウトプットに近い形式で伝えさせる。

 

もちろん「文字」とは限らないので、必要な時だけ対面すればいい。

 

それを徹底していけば、個人に一番必要な当事者意識、一定の度合いまでの自己完結、問題発見力も鍛えられる。

 

もちろん「本番での失敗」はしたくないので、最初はマネジメントが個人の「弱点」に応じて報告の形を教え、なぜその形式を取らなければならないのかを論理的に、納得できるように教える必要があるだろう。

 

ただ、「結論から述べる」ことは大前提だと思う。

 

英語の文法に似ているかもしれない。

 

「察しろ」「汲み取れ」が伝わらない理由

実は、目的達成のためのコミュニケーション不足で困るのは、上司だけ、つまり自分だけである。

 

「的確に報告せよ」というのは上司の脳内での「的確」であり、上司の都合でしかない。

 

ニュアンスを汲み取って欲しい、と言っても、「最終目的」の姿と全体像を全員が共有し、「一つの点」に集約させなければ意味がない。

 

しかしそれは、思うほど容易ではない。

 

ここを、「対面すれば解決する」と思いがちなマネジメントは多いが、そうでもない。

 

極端な話だが、隣同士に座って、一つのものを眺めながら話し合うとする。

 

しかし、あなたの場所からものを見る場合と、隣の部下からもの見る場合では、対象物に対しての「物理的な角度」は少し違っている。

 

その段階で、「全く同じ景色を見ている」わけではないのだ。

 

それを、自分の顔つきや声のトーンで同じものを認識せよ、というのはマネジメントの怠慢とも言える。

 

しかも、「顔つき」「声のトーン」はそれだけで立派な情報である。

 

言語情報に加えてこれらの視覚、聴覚情報まで同時に読み取れ、となると、人間の脳は、そんなに膨大な量の情報を瞬時に把握なんかできない。

 

そして、逆もあるだろう。

 

「こんなに一生懸命伝えているのに、なんで伝わらないんだろう」というのは、部下から上司に対して生まれる不満でもある。

 

お互いにとって完全に無駄な感情、情報量、時間である。

 

自己主張できない若者には、よりシンプルに

「自分の意見を話せない」若者が多いと嘆くマネジメントもまた多い。

 

衝突を避けたいというのもあるだろうが、近年は「言葉でうまく表現できない」という「日本語力の問題」がネックになっている傾向もあるように思う。

 

これを「努力不足」と切って捨ててしまうのは良くない。

 

文化が違うからだ。

 

それに、漠然と「どう思うか?」と聞かれると、なんだかたくさん喋らなければならないのではないか、そんなには喋れないから黙っている、と萎縮しがちでもある。

 

これに対応するところから始めなければならない。

 

解消方法の一つとして、「イエスかノーか」で答えさせるのも良いだろう。一問一答にしてしまうのだ。

 

「意見」もまた「情報」である。

 

それを繰り返して、下の階層までの情報引き出していく

 

そして本人に、全体像を示してやればいい。

 

コミュニケーションスキルの上達とは、同時に「論理的思考の強化」でもある。

 

これを根気よく続け、時には本人に示してやり、思考回路を強化することが最初のステップでもあるだろう。

 

また、忘れてはならないのは、コミュニケーションの基本として「なぜこの社員の意見がいま必要なのか」である。

 

一方的に、聞き出す側の望む形のものを求めるだけでは何も出てこない。

 

「話しやすい場所を与えればいい」という漠然としたものではなく、こうした理論的な部分から浸透させ、慣れさせていくことがまず重要ではないだろうか。

 

何でもかんでも共有すれば良いというものではない。

上に立つ者にも、良いコミュニケーションを進めていく上で反省すべきことは多々ありそうだ。

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参照
[1]NHK放送研究所「ビジネス・コミュニケーション調査」結果(2012)
https://www.nhk-cti.jp/service/bc_2012.pdf