2019/02/20

「コミュニケーション不足」をいかにして解消するべきか?

トラブルへの対応が遅れたり、最悪の場合、新聞の一面を飾るような不祥事にまで発展してしまう可能性もあるコミュニケーション不足。

メールやスマホなどのツールの普及で便利になったはずのコミュニケーションですが、多くの企業では、未だに組織内でのコミュニケーション不足が叫ばれています。それはなぜでしょうか。

チーム内のコミュニケーション不足に頭をかかえるリーダーのために、ここでは3つの視点からコミュニケーション不足についてさらに考えます。

 

本当に「コミュニケーション不足」が原因か?

「識学」というマネジメント理論によれば、まず考えるべきは「そもそもコミュニケーション不足が本当の原因かどうか」です。

 

何か問題があった時も「コミュニケーション不足が原因だ」といえば「コミュニケーションを密にしていきましょう」という解決方法になるでしょう。しかし、同様の問題が何度も発生すると、それはもう「コミュニケーション不足自体」が要因ではなく、コミュニケーションを不足させている本当の問題が隠れていることがわかります。

 

役割分担が不明確

本来コミュニケーションというのは、組織のルール・各人の役割や権限が明確に決められていれば、最小限で済むものです。しかしそれらが不明確な場合、関係者間での認識合わせや答え合わせをしなければならないため、余計なコミュニケーションが必要になります。

 

例えば担当者間で責任の重複があると、業務が滞っても「これは私の仕事ではない、あの人がやることだ」など意識上、相手の責任だと考え、コミュニケーションを取らないことになります。そのため、「業務が滞った原因はコミュニケーション不足だ」という考え方につながるのです。

 

ところが本当の問題はコミュニケーション不足ではなく、「責任の重複」にあります。この問題を解消し、業務が滞ることによる責任の所在を明確にすれば、責任を負う人間は解決のためにコミュニケーションを取らざるを得ません。このように問題の本質は、組織のルール・各人の役割や権限の曖昧さにあるのです。[1]

個人的な得手不得手

いくら組織のルール・各人の役割や権限を明確化しても、「個人的にあの人は苦手だから」「あの人と顔を合わせたくない」といった個人的な好き嫌いが原因ということもあります。

 

コミュニケーションを意図的にとらないのは「完全なる責任放棄」ともいえますが、性格の合わない社員や完全に仲たがいしてしまった社員を協力させることは難しいものです。

そのコミュニケーション不足によって生じた結果にもとづいて評価を下げ、役割を外れてもらうか、経営者やリーダーが意識して役割分担の調整をしてコミュニケーションをとらなくてよい方向にシフトしていくことになります。[2]

 

言葉の定義が明確でない

最近出てきたカタカナ英語やビジネス用語なども問題となることがあります。言葉の定義が人によって異なると、十分に意思疎通をしていても十分に伝わっていないことがあります。「リーダーシップ」や「マネジメント」など、すでに使い古されたような用語であっても、どういう意味で使っているか聞いてみると人によってばらばらな答えが返ってくる可能性があります。

 

コミュニケーションをしていて「おかしいな、話が合わないな」と思ったら、一歩立ち止まって、どういう意味でその単語を使っているのかを確認してみるのが良いでしょう。コミュニケーションの回数が原因ではなく、言葉の理解の齟齬が原因の可能性もあります。[3]

 

コミュニケーション不足の事例

風通しの悪い社風や部下が何やっているかわからないようだと、コミュニケーション不足といわざるを得ません。コミュニケーション不足が社内の問題だけにとどまらず、社会的な大問題になってしまう可能性も否定できません。

 

2016年に発覚した事件はコミュニケーション不足が原因した事例に他なりません。様々な業界で続いたデータの不正改ざんですが、そのうちの1社では重要なデータの改ざんを行い、公表していました。

また同時に消費者クレームの隠蔽を行っており、問題の発覚が遅れたという点も重大な過失として認められています。

 

この事例では、商品発売から数年経ったときに、提携企業の監査により発覚しました。

そしてこの事件を分析した第三者委員会では「開発部門に強いプレッシャーがかかり、データの不正操作につながった可能性がある」と指摘しています。

 

それ以前にも開発の進捗が遅れを上司への報告をしなかったりするなど、コミュニケーションができない状態が続いていたことが問題視されました。物を言えない企業風土により、問題を隠蔽しやすい状態になっていたのです。

組織内に問題を相談しやすく、また風通しの良い社風が実現できていれば、このような事態を避けられたに違いありません。

 

コミュニケーション不足の原因

コミュニケーション不足の原因となるのは、上記の例のように「下にものを言わせぬ風通しの悪い社風」やデジタルネイティブ世代の「コミュニケーションスキルの低下」、「ITツールへの依存度の上昇」が挙げられます。[4]

「相手が上司や年上だと遠慮してしまい何も言えない」従業員や、一見優秀に見える「仕事の話しかしない」従業員は、大切なことを見逃したり、伝え忘れている可能性もあります。[5]

 

コミュニケーション改善のマネジメント

コミュニケーション不足による弊害は大きく、積極的に企業体質を変えていかなければ自薦に改善されることはありません。しかしその企業体質にどっぷり漬かってしまっている従業員やマネジメント層にとっては「どのように改善したらよいのかわからない。」ということもあり得ます。

 

多くの場合、会社の体質が部下から変わるということはありません。まず上司が率先して企業体質を変える努力をする必要があります。では企業体質を変えるためには、リーダーである上司がどのように変わる必要があるのでしょうか。ここでは、「サーバントリーダーシップ」「チーミング」という2つのマネジメント理論を参考にご紹介します。

 

リーダーが積極的にコミュニケーションをとる「サーバントリーダーシップ」

「サーバントリーダーシップ」とは、教育コンサルタントのロバート・K・グリーンリーフが提唱した「リーダーとは、まず相手に奉仕し、その後に相手を導いていくものである」という考え方に基づいたリーダーシップ哲学です。

 

この哲学によれば、リーダーはメンバーに奉仕し(=サーバント)、メンバーの気持ちを汲み取ったり積極的にコミュニケーションを図ったりしながら、組織の目標達成に向かってチームをサポートする役割を担っています。つまりリーダーには「どうして言わなかったんだ」「理解していると思っていた」などメンバーのコミュニケーション不足を指摘するのではなく、メンバーの機微を観察して「何か考えはあるか?」「問題ないか?」などと自分からコミュニケーションを取ることが求められるのです。

 

このために理解しておくべきなのは、支援型リーダーシップとも呼ばれるサーバントリーダーシップと、リーダーがメンバーに命令して引っ張る「支配型リーダーシップ」との差です。

 

例えば「何か考えはあるか?」「問題ないか?」という問いかけに対してメンバーが答えてくれても、相手の意見を否定したり、バカにするだけなのであれば意味がありません。積極的にコミュニケーションを取るのは、自分の正しさを証明するためではなく、あくまで組織の目標達成に向かってチームをサポートする役割を全うするためです。[6]

 

サーバントリーダーの特徴

サーバントリーダーになるためには必要なスキルは「傾聴」「共感」「癒やし」「気づき」「納得」「概念化」「先見力」「執事役」「人々の成長への関与」「コミュニティづくり」という10項目。その中でも最も重要なのは「傾聴」と「共感」です。従業員の話を真摯に聞くことができて、部下の意見に共感することができなければ、部下の考えや思いをくみ取ることはできません。[7]

 

リーダーは目標を指し示す必要がありますが、「私の言う通りに進めてくれ」といってしまっては、支配型リーダーシップとなってしまいます。リーダーは過去の経験から「こうしたほうがいい」という方向性があるかもしれませんが、経済変化が著しい現在では「昔はその方法がベストだったけれど、今はもっといい方法がある。」ということもあり得ます。現場に近い部下の話に耳を傾け、部下が活躍できるよう環境を整えて支えていくのがサーバントリーダーとしての基本です。

 

サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップは、経験のない新入社員や考えることが苦手なメンバーには向いておらず、ある程度の知識と経験がある部下の自立心を引き出す形で利用されることが多いでしょう。その際になかなか部下が思うように動かない場合、すり合わせや業務に時間がかかることがデメリットとしてあげられます。[8]

 

コミュニケーション強化は「チーミング」に学べ

「チーミング」はハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した組織マネジメント理論です。この理論ではメンバー間のフラットな関係性の構築により、変化に柔軟に対応できる組織を作り、効果的な協働により成果をあげることを目指します。この理論の中で挙げられるリーダーの仕事は以下の3つです。

 

  1. わかりやすいビジョンで組織の方向性を明確化する。
  2. メンバーが心理的に安心できる環境をつくり、気づきや学びを発言しやすい雰囲気を作る。
  3. メンバーが協力しやすい場やリソースを提供し、組織が正しく機能するようマネジメントする。

 

チーミングの本質

チーミングの本質は、チームを「学習する組織にする」という点です。マニュアルを作れないような複雑な社会に生き、仕事をしていく中で「メンバー間のフラットな関係性」を前提として、ミスがあることを当然として受け止めながらチームで協力して課題を解決していくことにあります。

 

そのため、リーダーだけでなくメンバー間でいかに誠実な会話ができるか、協働できるか、ミスを許容できるか、そしてプロセスの合間に結果を観察し、よく話し合うことが大切です。[9]

 

コミュニケーション不足に陥る理由とリーダーの役割の関係性

リーダーがコミュニケーション不足の解消を望む際に重要視したいのは「メンバーが心理的に安心できる環境をつくり、気づきや学びを発言しやすい雰囲気を作れているか」という点です。自分のチームに自由に発言しづらい雰囲気、あるいは発言しても意味がない・否定される・攻撃されるような雰囲気がないかを振り返ってみましょう。

 

もしあるとしたらその原因は何でしょうか?例えばリーダーが「絶対」であるという暗黙の了解があれば、メンバーは自分の考えや感情を押し殺しているかもしれません。「失敗は何があっても許されない」という空気があれば、ミスを隠蔽したり、何か新しいアイディアがあっても「リスクがあるから」と言い出せないかもしれません。

 

このようにリーダーが「メンバーが心理的に安心できる環境をつくり、気づきや学びを発言しやすい雰囲気を作る」という仕事をこなしていけば、チーミングの前提となる「メンバー間のフラットな関係性の構築」が実現され、コミュニケーション強化につながります。

 

コミュニケーション不足改善に利用できるツール

コミュニケーション不足解消のためには、メンバーとの接点を増やす必要があります。一緒にランチに行ったり、感謝の気持ちを言葉にして伝えたりなど、顔を合わせてのコミュニケーションが最も大事ですし、それ以前に職場の雰囲気をコミュニケーションがとりやすいフラットな状態にする必要があります。

 

しかしどんなにコミュニケーションを取りたいと望んでいても、北海道と沖縄に事業所が分かれているような場合には、顔を合わせてのコミュニケーションが難しくなります。そのようなときにはオンラインのツールを導入してみるのもよい方法です。[10]

 

社内SNSやブログ

フェイスブックを利用している社員も多いと思いますが、フェイスブックで直接社員同士を結び付け会社に導入してしまうのは個人情報の観点からもNGです。しかしながら、社内SNSであればセキュリティーの面からも問題はありません。

 

社内SNSはノウハウの共有や困りごとの相談の共有をはじめ、アンケートなどにも利用できます。また、社内報などを社内SNSで運用することにより、タイムリーに情報共有することができますし、印刷や配布の手間も省けます。

 

また、社内ブログでは必要な記事の検索やコメント、RSS化することが可能です。社内イベントの写真や記事をアップすると、遠く離れた部署間メンバーでもコミュニケーションを深めることができます。

 

ビデオ会議やチャットツール

メールや電話は離れている相手とのコミュニケーションに最適ですが、相手の顔が見えないと相手が何を考えながら話しているのか不安になりますよね。ビデオ会議システムやチャットツールのライブ電話機能などを利用すると、相手の顔を見ながら話をすることができます。

 

相手の顔が見えている状態とそうでない状態では、安心感が違います。沈黙の時間であっても相手が「考えているのか」「話を聞いていないのか」「興味がないのか」を、顔を見ながら推察できます。そのため心理的にコミュニケーションをとりやすくなります。

 

まとめ

様々な原因から叫ばれる企業でのコミュニケーション不足による弊害は、意見を言いやすい社風作りやマネジメントやリーダーの役割や対応方法を変えていくことにより改善していきます。

 

社風を変えるというのは大変なことですが、時間をかけてじっくり取り組めば実現可能です。ぜひ何も言わなくても皆がコミュニケーションを取り合って自らミスをカバーしあう、理想の企業を目指しましょう。

 

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参照

[1]https://next.rikunabi.com/journal/20150525/
[2]http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1901/10/news011_2.html
[3]http://www.enterinnovation.co.jp/blog/%E7%A0%94%E4%BF%AE/221.html
[4]https://mitsucari.com/blog/lack_of_internal_communication/
[5]http://jinzainews.net/articles/IDPTU
[6]https://president.jp/articles/-/15523
[7]https://president.jp/articles/-/15523
[8]https://wkvs3.com/leader-skill/shihaigata-servant-leadership#i-2
[9]http://kshimizu.hatenadiary.jp/entry/2016/09/13/0553110
[10]https://bowgl.com/2017/07/28/communication-improvement/