2018/09/19

コンプライアンスは無力?「クラッシャー上司」を組織で活かす方法

部下を精神的に追い詰めてときには退職に追い込むこともある「クラッシャー上司」。こうしたパワハラは止めなければなりません。しかし、クラッシャー上司にはコンプライアンスの力が働かないことも少なくありません。ここではクラッシャー上司が生まれる仕組みを解説するとともに、マネジメント層がクラッシャー上司によるパワハラを未然に防ぎ、組織に活かすための方法を紹介します。

 

コンプライアンスでは「クラッシャー上司」を管理できない

 

3タイプのクラッシャー上司

「クラッシャー上司」とは、自らの能力は高く仕事が出来る人たちが、部下を精神的につぶす行為をしながら、自らは出世を図る上司たちを指します。このように表現すると、「部下をおとしめながらのし上がっていく人」をイメージするかもしれません。もちろんそれもクラッシャー上司の一つのタイプですが、松尾一葉著「クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち」(PHP新書:2017年1月14日)によればクラッシャー上司には以下の3つのタイプが存在するとされています。

 

「悪気はないが鈍感な」クラッシャー上司

まず紹介するのは、悪気はないが鈍感なクラッシャー上司です。例えばこのタイプは部下が仕事で頭を抱えていると、「手伝ってやるよ」と声をかけます。これだけ見れば単に「いい上司」ですが、クラッシャー上司の場合はちょっとした手伝いでは終わりません。よかれと思って自分の気力と体力を基準に手伝い続け、深夜になって当の部下が疲れ切っていてもまだ手伝い続けます。部下からしてみればもともとあった仕事のプレッシャーに加えて、「上司に手伝ってもらっている」「上司に監視されている」というプレッシャーがかかり、最終的に部下は潰れてしまうのです。このタイプの問題は上司が鈍感なところにあり、基本的に上司に悪気はありません。

 

「共感力が全くない」クラッシャー上司

二つ目のタイプが、共感力が全くないクラッシャー上司です。一つ目のタイプは鈍感なだけで共感力は備えていますが、このタイプの上司は共感力を持ち合わせていません。そのため部下が仕事でミスをしたりすると、その非を責め続けます。相手が精神的に追い詰められているかどうかは一切考えません。共感力がないせいで部下の「ほめられたら嬉しい」「ほめられたい」という気持ちにも気づけないので、このタイプは部下をほめることもしません。それよりも今自分が見えている部下の欠点に執着し、それを責めることに終始してしまいます。細かい部分にまで指摘を入れるような人に、このタイプが多い傾向があります。

 

「姑息ないじめを展開する」クラッシャー上司

三つ目のタイプが、前述した「部下をおとしめて、自分がのし上がっていく人」です。このタイプのクラッシャー上司は、はっきりとターゲットを定めて集中的にいじめていきます。ターゲットになりやすいのは、自分の地位を脅かすほど優秀な部下や後輩です。しかも面と向かっていじめるのではなく、「ターゲット以外を引き連れて飲みに行く」などの陰湿なやり方をとります。3つのタイプの中で最も悪意の強いクラッシャー上司と言えるでしょう。

 

マネジメント層は、悪意の有無にかかわらず部下を精神的に追い詰めていればクラッシャー上司なのだと知っておく必要があります。

 

クラッシャー上司がコンプライアンスを回避できる仕組み

クラッシャー上司が単に部下を精神的につぶすだけであれば、会社がただちにパワハラと認定し、指導、処分すべきです。 [1]

 

しかし、一般的にクラッシャー上司は、出世できるだけの高い能力と評価、要領の良さを備えているものです。こうなるとマネジメント層は深層心理として、指導や処分を躊躇しがちになります。なぜならその指導や処分をきっかけに、上司が仕事へのやる気を失ったり、意図的にパフォーマンスを下げたりすると、組織の損失につながりかねないからです。

 

このように考えると、会社はクラッシャー上司の行為を黙認せざるを得なくなります。するとクラッシャー上司本人も「自分は部下を育てているだけ」と自分の行為を正当化します。周囲も「この会社では普通のこと」「仕方のないこと」と受け入れてしまうのです。

 

その結果クラッシャー上司はパワハラを続けながら組織での評価を高めていくのです。

 

「クラッシャー上司」をイノベーション!組織で活かす方法

確かにクラッシャー上司は組織の中で優秀な存在なのかもしれません。しかし長い目で見ると、クラッシャー上司の存在が組織の損失につながる可能性があります。

 

個人がカバーできる仕事の量や質には限界があります。今後、企業が組織として生き残っていくためには、人材の力を引き出し、イノベーションを進めなければなりません。

 

ところが、クラッシャー上司は自分と合わない部下を排除しようとします。すると組織の多様性が失われ、クラッシャー上司の能力に依存した組織と化します。クラッシャー上司を放置すると組織としての成長が止まり、競合から取り残されてしまうのです。

 

クラッシャー上司になりうる人には能力のある人材もいます。上司にパフォーマンスの高い仕事を継続させるために必要な考え方を紹介します。

 

上司と部下の役割を徹底的に理解させる

まず、従業員全員に「上司」と「部下」のそれぞれの役割をしっかりと理解させることが大事です。なぜならクラッシャー上司となりうる人材は「上司の仕事」をはき違えている場合があり、部下も自分の仕事と上司の仕事を区別できていない可能性があるからです。

 

「識学」マネジメント理論によれば、上司と部下の仕事は以下のように定義できます。

 

立場 仕事
上司 自分に課せられた目標を達成するために、部下に目標を与え、部下の仕事を評価する。
部下 自分に課せられた目標を達成するための方法を自分で考えて行動し、結果を出す。

 

このように、部下に対して上司が持つ機能は「目標設定」と「評価」だけです。しかし前述した3つのクラッシャー上司のうち、悪気はないが鈍感なクラッシャー上司と、共感力が全くないクラッシャー上司は、部下の仕事のやり方にまで手や口を出すものです。

 

本人たちは「部下を育てている」気持ちでいますが、こうしたやり方は「自分で考えて動けない部下」や「仕事の結果を上司のせいにする部下」を生み出すだけです。部下が上司の指示に従って出た結果を「自分の結果」と受け止めることは難しいでしょう。

 

この状態が続くと部下は自分の本来の仕事に気づくことができず、「自分の仕事は上司の指示に従うことだ」と考えてしまいます。結果、本来あるべき上司と部下の関係がゆがんでしまうのです。

 

部下の機能は与えられた目標に対して思考し行動し、結果を出すことです。部下の機能を組織全体としてトップダウンで定義しなければ、上司と部下の関係が正常化することはありません。

 

大切なのは「組織全体として」という部分です。クラッシャー上司になりうる人間は「自分だけが指導を受けている」と、自分を否定されたように感じてしまうからです。マネジメント層は「組織として上司と部下の仕事を明確化する」必要があるのです。

 

これがきっかけでクラッシャー上司になりうる人が仕事のやり方を改めてくれれば、「パフォーマンスの高い仕事を継続してもらう」という理想的な結果を実現できるでしょう。

 

組織の評価の基準を変え、マネジメントに徹する

2つ目の方法は、「クラッシャー上司が評価されている」という状態そのものを問題視するやり方です。前述したように上司の仕事は「自分に課せられた目標を達成するために、部下に目標を与え、部下の仕事を評価する」ことです。プレイヤーになって目標を達成するのは、本来の上司がするべきことではないのです。

 

このように考えると「部下を精神的に追い詰めながら、個人として結果を残す」というクラッシャー上司の在り方は、上司として評価されるべきではありません。部下をつぶしているのは上司の「仕事」をしていないのと同じだからです。

 

組織の評価の基準を個人の成果に置くのではなく、「部下に適切な目標を与えて評価し、自分に課せられた目標を達成しているか」に置けば、必然的に部下を潰すクラッシャー上司の評価は下がります。

 

このような変化を組織ぐるみで起こすことができれば、クラッシャー上司の変化が期待できるでしょう。

 

「建設的人事処分」としてのクラッシャー対策プログラム

3つ目は心理カウンセリングをもとにした考え方です。クラッシャー上司の命名者の一人であり『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』の著者松崎一葉さんは、産業カウンセラーとして活動する中で、クラッシャー上司が抱える「自己愛の歪み」や「強烈な劣等感」に気づいたそうです。彼らの多くは幼少期の教育環境に問題があり、それが原因で「自分こそ正しい」と思い込んで他者を傷つけ、おとしめるのです。

 

そこで松崎さんが開発したのが「クラッシャー対策プログラム」です。このプログラムはクラッシャー上司の言動を会社がパワハラと認定した後に、「建設的人事処分」としてクラッシャー上司を参加させる3日間の集中カウンセリングプログラムです。

 

このプログラムではロールプレイングを通じて他人の「心の痛み」を実感させ、心理検査を通じて本人の自己愛の歪みや劣等感に向き合わせます。もちろんクラッシャー上司には精神的ストレスがかかります。しかしそれを含めて心理カウンセラーがフォローし、上司が抱える心の問題を解決するのが、このプログラムの目的です。

 

他の方法に比べてコストはかかりますが、根本的な原因の解決につながるという点では、高い効果が期待できそうです。

 

「クラッシャー上司」を使いこなそう

クラッシャー上司はもともとの能力が高いので、うまく手綱を握れば必ず組織に貢献してくれます。問題は組織の成長を止めてしまっているところだけなのです。マネジメント層は彼らのタイプをしっかり理解しながら、クラッシャー上司のパワハラを未然に止められるような施策を導入し、彼らの能力を上手に使いこなすようにしましょう。

 

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参照

[1]http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html 厚生労働省