2019/04/08

社員の副業を認めてイノベーションを起こすメカニズム

一般的に企業は、社員が副業することを嫌います。就業規則で副業を禁止している企業もありますし、副業が発覚した社員を処罰することもあります。

しかし最近は、副業を認める会社が現れ始めました。しかも、そういった企業はさまざまなイノベーションを生み出しているのです。

副業とイノベーションには、確かに相関関係がありそうです。なぜなら社員が副業によって「外の空気」を吸えば新しいアイデアが浮かび、本業に力が入るからです。

 

企業が社員の副業を嫌う理由と政府の考え

企業の経営者や管理職が社員の副業を嫌うのは、本業がおろそかになると考えるからです。例えば午後6時に本業の会社を退勤した後、居酒屋で夜中の2時まで副業バイトをしたら、翌日の本業に支障が出るのは明らかです。

また企業は、社員が会社のノウハウを副業先に持ち出すのではないかと危惧します。企業にとって社員の副業は、情報漏洩や利益相反のリスクを高めることなのです[1]。

ただ、社員を縛りつけるために副業を禁止している企業ばかりではありません。

副業の労働時間は本業の会社の労働時間にプラスされるので、その社員が過労で健康を崩すかもしれません。企業は労働者の健康を維持・増進しなければなりませんが、社外の労働環境まで把握できません。衛生管理の観点から副業を禁じている企業もあるのです。

そのため厚生労働省は、「2017年12月までは」企業寄りの考えを持っていました。同省は、就業規則をつくっていない企業のためにモデル就業規則というものを作成して公開していたのですが、そこには「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という条項を盛り込んでいたのです[1]。

ところが「2018年1月からは」副業を促進する立場に変わりました。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をつくったほどです[1]。

日本の経済発展を後押しする経済産業省は、厚生労働省より早く副業容認派になっていました。2016年11月に「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」を立ち上げ、兼業・副業の成功事例や優良事例を集めていたのです[2]。

そして経済産業省は「パラレルキャリア・ジャパン」というキャッチフレーズまでつくりました。パラレルキャリアとは、兼業・副業のことです。同省は、副業が日本経済を活性化させると考えているのです。

さらに政府の働き方改革実現会議は、副業や兼業は新技術の開発やイノベーションに有効であると提言しました。
このように、副業に興味がある会社員にはいま、追い風が吹いています。

 

DeNAが副業を解禁した背景

スマホゲーム、プロ野球球団経営、自動運転車、遺伝子検査、eコマースなど、もはや「何屋さん」なのかわからない株式会社DeNAは2017年10月に、新しい人事制度「フルスイング」をスタートさせました[3][4]。

人事制度の刷新なので、完全に社内向けの出来事なのですが、日本経済新聞は経済ニュースとして報じました。
それは、今の時代にマッチした人事制度であると考えたからでしょう。

新人事制度フルスイングでは、社員の社外の副業を認めました。この背景には、他社や他職種で業務経験を積みたいという社員の要望がありました。

他社での副業や起業を希望する社員は上司に相談する必要はありますが、社員や会社に相乗効果が生まれるかどうかは問わないとしています。

 

多様な働き方を容認するDNA

政府の「副業風」があるとはいえ、東証一部上場企業で時価総額が3,000億円に迫り、連結従業員数約2,500人という大企業が、なぜこうもすんなりと副業を容認することができたのでしょうか。

どうもDeNAには、常に働き方をみつめ直すDNAが存在するようです。
例えばDeNAには社内兼業という制度もあります。これは業務時間の最大30%まで社内の他部署の仕事をしてもよい、というルールです。

これは私見ですが、社内兼業は「何屋さん」だかわからないDeNAにはとてもよい仕組みだと思います。多くの企業は社員にシナジー効果を求めますが、会社がなんの手立てもしないでそのような果実を得られるはずがありません。

DeNAは事業内容が多岐に渡るので、その分余計にシナジー効果を求めているはずです。社内兼業制度があれば、スマホゲームの開発者が自動運転車事業に参画することもできます。予想もしないシナジーが生まれれば、イノベーションにつながるかもしれません。

また、社内兼業は、人事異動の不満の解消にもつながるのではないでしょうか。DeNAは大企業なので、社員1人ひとりの要望をかなえることは簡単ではありません。だからといって優秀な人材を、希望しない部署に張り付かせたままでは離職につながってしまいます。

そうした社員が社内兼業制度を使えば、勤務時間の30%を自分がやってみたかった仕事に充てることができます。不満はわきにくくなるでしょう。また兼業先で力が認められれば、社内ヘッドハンティングにつながるかもしれません。

 

出戻り社員がAI創薬でイノベーションに挑戦

DeNAは2018年1月、創薬事業に乗り出すと発表しました[5]。DeNAはこれまでもヘルス事業に進出していて、株式会社DeNAライフサイエンスという子会社もあります。
しかし創薬となると次元が異なります。創薬とは、病院や診療所で使ういわば「本物の新しい薬」をつくることなので本来は、製薬メーカー以外は「手出しできない」ビジネスです。

DeNAがやることは、AI(人工知能)を使って創薬プロセスの生産性を向上させることです。旭化成ファーマや塩野義製薬といった製薬メーカーと組み、DeNAはAIを含むIT技術を提供するわけです。
このAI創薬のプロダクトマネージャーを務めるDeNA社員のI氏は、中途採用でDeNAに入社し、その後退社し、再びDeNAに戻ってきた方です[6]。

I氏は副業をしたわけではありませんが、副業よりももっとしっかりと外の空気を吸って成長してDeNAに戻ってきたのです。その出戻り社員がAI創薬という新しいチャレンジを任されたわけですから、DeNAにイノベーションをもたらすかもしれないのです。

なので新人事制度フルスイングでも、副業によって社員をパワーアップさせられるかもしれません。

 

イノベーションを重視する企業は副業をどう考えるべきか

もしある企業が時代の流れを感じて社員の副業を認めざるを得なくなったとき、嫌々容認することはしないほうがいいと考えます。

例えば、受注件数が減って社員に残業させることができなくなり、残業代が稼げなくなった社員の不満を解消するために副業を認める、といったケースは前向きな副業容認とはいえないでしょう。

ではポジティブな副業容認とは、どのようなかたちのことをいうのでしょうか。
企業としてはやはり、社内にイノベーションがわいてくるような副業のさせ方をしたいところです。

副業を認めた企業でも、個人事業主として活動することは認めても、他社に勤務することは禁じていることが多いといいます[7]。

しかしこれは中途半端だと思います。副業をする社員が、他社に勤務せずに他社のために働く方法はいくらでもあります。そうなると、この社員は「こそこそ」することになります。これでは社員は「本業でイノベーションを起こすために外の空気を吸いに行く」という気持ちになれないでしょう。

副業解禁をイノベーションにつなげたい企業は、懐を深くして「勤務時間外に行い、本業に支障が出ず、利益相反にならなければ、どのような副業でもOK」とすることで、社員に自由に活動させてはいかがでしょうか。

イノベーションを起こすイノベーターは、広い人脈を持っておいたほうがいいからです。地方銀行の行員がIT企業で副業すれば、地方版フィンテックの着想が得られるかもしれません。営業パーソンが夜中の倉庫作業のバイトをすれば、ユニークな流通経路を考案できるかもしれません。

 

まとめ~企業はもう社員を縛れない。ならばあえて外を見せる手もある

これだけ人手不足が深刻化すると、人材の流動性はますます高まるでしょう。労働者の意識も様変わりして、賃金アップや役職だけでは優秀な人材をつなぎとめることは難しくなりました。
さらに副業の容認を「働きやすさ」の一要素と考える労働者もいます。

副業をして外の世界を知れば、「やっぱり自分の会社が一番居心地がよい」と感じるかもしれません。また経営陣は、従業員にそう感じさせる会社づくりをしていかなければならないのではないでしょうか。
社員たちが「働きやすい」と感じる職場環境づくりこそ、イノベーションの「畑」です。副業を、イノベーションという花を咲かせるための「肥料」と考えることもできます。

 

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参照

[1]:副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
[2]:兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集を取りまとめました(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170531005/20170531005.html
[3]:フルスイング(DeNA)
https://fullswing.dena.com/
[4]:DeNAが副業解禁、社内外でパラレルキャリアを推進(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21820070T01C17A0000000/
[5]:製薬企業の化合物データを活用したAI創薬に関する共同研究等を実施(DeNA)https://dena.com/jp/press/003535
[6]:DeNAを卒業した僕が、AI創薬で新たなチャレンジをしに戻ってきた理由(DeNA)
https://fullswing.dena.com/archives/1551
[7]:副業が無理なくできる環境を整えよう(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO30433350S8A510C1EA1000/