2018/10/05

失敗したのに前向き?!ホリエモンの会見に見る前向きな姿勢

2018年6月30日5時30分。北海道の大樹町から打ち上げられたインターステラテクノロジズ(IST)は観測ロケットMOMO2号機を打ち上げ、わずか4秒後に大破炎上しました。

日本では民間で開発された初のロケットが宇宙まで行くというので盛り上がっていましたが、残念な結果に集まった人々からも「がっかりです」というコメントが出ていました。

 

一方、その後の記者会見では創業者のホリエモンこと堀江貴文氏から

「次の3号機のためにどう改善するかが課題になってくる。そこに全力投球できるよう、バックアップ態勢を強化しようと思う」という前向きなコメントが出るなど、失敗に落ち込んで、やめてしまおうなどと考えている様子は全く見られませんでした[1]。

また稲川貴大・代表取締役社長も「ロケット開発は総合工学。1つでも不合格があればうまくいかないし、ハッキリ分かりやすい形で結果が出てしまう」「初号機で多くの不合格が出て、膿を出し切ったと思っていたが、まだ出し切っていなかったのかな」[1]と、開発の難しさを説明していました。

 

いずれにせよ、MOMO3号機の開発に向かう姿は、後ろ向きではありません。なぜ宇宙開発の現場では前向きで、失敗によるモチベーション低下が起こらないのでしょう?

 

モチベーションとは何か

そもそもモチベーションとは何でしょうか。大辞林をひいてみますと、

【① ⇒ 動機付け ② 物事を行うための、動機や意欲になるもの。刺激。熱意。 〔消費者の購買動機や、スポーツ選手の意欲などに用いられることが多い〕】

とあります。ちなみに「動機付け」は

【生活体(人や動植物)を行動へ駆り立て、目標へ向かわせるような内的過程。行動の原因となる生活体内部の動因と、その目標となる外部の誘因がもととなる。モチベーション。】

と書かれています。

これらは1973年にフレデリック・ハーズバーグが提唱したもので、「内発的動機付け」の研究をしているリチャード・Mライアンとエドワード・Lデシも「物事を行う為の動機や意欲」として「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2つを対比しています。 [2]

「内発的動機付け」とは「自分がやりたいからやる」という、何かに夢中になることによって発生するモチベーションです。

一方「外発的動機付け」というのは「○○のために仕事をする」という、目的意識からのモチベーションです。

この2つが組み合わさることで、人間のモチベーションは維持されているのです。

 

モチベーションが上がるとき、下がるとき

では、この「モチベーション」が上がったり下がったりするのは何故でしょうか。どういうときに上がって、どういうときに下がるのでしょうか。

まずは「外発的動機付け」から考えてみましょう。
「○○のために仕事をする」というモチベーションですから、仕事が上手く行っているときにはモチベーションは維持されます。一方、仕事でトラブルが続いたり、仕事から得られるリターンに魅力を感じなくなったりすると「なんでこんな仕事をしているのだろう?」と、ふと我に返る瞬間があります。
そうなると、モチベーションの維持が難しくなるわけです。ハーズバーグはこれへの対応策として「職務充実」という考え方を提唱しています。「より難易度の高い仕事にチャレンジさせる」「権限を委譲する」など、本人の達成感や充実感を上げる施策をとることで、モチベーションを維持しようというものです。

一方「内発的動機付け」の場合にはどうでしょう。「自分がやりたいからやる」というモチベーションですから、何かに夢中になっている間は良いのですが、こちらもやりたいことに飽きてしまうと、モチベーションが下がってしまいます。
実際、デシの研究でも自分で選択した場合には、他者から与えられた条件で行うよりもモチベーションを維持しやすい事がわかっています。これをエンハンシング効果と言います。

ですから、「それをやりたい」「チャレンジしたい」と思い続けている限り、モチベーションは下がらないのですが、トラブルが続いたり、飽きたりしてしまうと、モチベーションの維持は難しくなります。

 

宇宙開発現場でのモチベーション

しかし、堀江氏の例にもあるように、宇宙開発・ロケット開発の現場では失敗が続いても原因を確かめ、それを改善しようということで皆が頑張っているように見えます。モチベーションが下がっているようには見えません。

 

ロケット開発では、「初期の失敗は当たり前」という風土があります。世の中にあるものを真似して作るのではなく、誰も答えを知らないものを一から開発しているため、失敗を次に活かすという風土があるのです。

 

実際にNASAをはじめとするアメリカのロケット開発の現場でも、今回のインターステラテクノロジーズの打ち上げ失敗がかわいく見えるような派手な失敗が続いていました。

それでもモチベーションを維持できたのは「宇宙へ行きたい」という強い内発的動機付けがあったからです。もちろん、当時のアメリカは旧ソ連と冷戦中であり宇宙開発競争が行われていましたので、大量の予算が投入されていました。
ですから、ライバルに負けられないという強い外発的動機付けもあったでしょう。それが失敗にめげず、先に進む原動力となっていました。

 

日本での例ですと、JR東日本からJAXAの初代理事長に抜擢された故山之内秀一郎氏のエピソードとしてこんなものがあります。

 

ロケットが2機続けて失敗した後、H-2Aロケット初号機打ち上げ成功後の記者会見で

「新幹線は、営業運転をはじめる前に250万キロも空荷(乗客を乗せず)で走らせてテストしました。それでも、営業運転して2年間はトラブルが次から次へと出て来た。だからロケットも徹底的にテストしろって言ったら、『そんなことしたら壊れちゃう』と言われてショックを受けまして」[3]と語っています。

 

ロケットのエンジンは長時間噴射テストを行うと、高温にさらされ続けるために壊れてしまいます。つまりロケットエンジンは十分なテストを行えないまま打ち上げに使われるのです。

 

しかもロケット本体も打ち上げる前にテストができません。上手く行くかどうかわからない一発勝負です。しかも1機100億円もする高価なものですから、空荷で打ち上げたりすることはなかなかできません。ですから試作機として作ったものであっても、荷物(人工衛星)を積んで打ち上げます。

 

決して製品を作って打ち上げを行っているわけではありません。そのため、失敗することだってあるわけです。そんな状態ですから、強い内発的動機付けがなければ、すぐに挫けて辞めてしまうでしょう。

モチベーション・コントロールのポイント

強い内発的動機付けが宇宙開発現場での高いモチベーションに繋がっているという話をしました。

では、世の中一般の人はどうでしょう。
皆が皆、「好きなことをやっている」わけではありませんし、ものすごい目標に向かってチャレンジしているわけでもないでしょう。
そんな中でモチベーションをコントロールするのであれば、定期的に幾つかのポイントをチェックしてみましょう。

まずは内発的動機付けのチェックです。ハーズバーグの提唱した「動機づけ・衛生理論」[4]では、不満要因(衛生要因)を取りのぞいても満足感には繋がらず、むしろ動機づけ要因にアプローチしなければならないとされています。つまり、
「自分の好きなことをやっているか」
「仕事を通して、自分の考えや発想を表現できているか」
「主導権を持って仕事に取り組めているか」などが、チェックポイントです。

「好きこそものの上手なれ」という言葉もあるとおり、内発的動機付けが高い人は、好きで、集中しても苦にならない仕事を自分のペースでできているとモチベーションは上がります。逆に好きでもない仕事を周りから押しつけられ、マニュアル通りにやれと言われてしまうと、どうしてもモチベーションは下がるでしょう。

もう一つの外発的動機付けはどうでしょう。もし内発的動機付けが弱い状態でも、「周囲の環境が(人間関係も含めて)良い」「給料が高い」「他人に自慢できる仕事をしている」と思っていれば、モチベーションを高く維持することができます。こちらも待遇が悪く、人間関係が最悪で、他人の目を気にしなければならない仕事であれば、モチベーションは上がらないでしょう。

デシは「選択の自由」や「自己決定」などの内発的動機付けがモチベーションには重要であると述べています[5]が、やりたいことをできていて、努力した結果手に入る成果(発想の表現結果や給料)が自分にとって魅力的なもの(他人に自慢できるなど)であれば(外発的動機付け)、モチベーションを維持できるということです。

 

今日からできるモチベーション・コントロール

最後に、今日からでもできるモチベーションのコントロール方法について説明しましょう。

先のチェックをした結果、内発的動機付けが弱いのであれば、まずは「何をやりたいのか」を明確にしましょう。人生をかけるに値する大目標が見つかればそれに越したことはありませんが、いきなりそういうものは見つからないでしょう。
ですので、今いる会社の中でできそうなことで、かつ、自分が意欲を持って取り組めそうな内容を探してみましょう。そして、それを本当にやりたいと心から思うのであれば、上司に相談したり、場合によってはそれができる部署への転属願いを出すことも手段の一つです。
ただし、本気でそれをやりたいと心から思うのでなければ、周りの人を説得することは難しいので、しっかりとやりたいことについての勉強をすることも忘れずに。

一方、外発的動機付けが弱いと感じたなら、どういう状態であれば良いのかを考えましょう。給料が上がれば良いのか、ワークライフバランスが取れる職場になれば良いのか、それとも人間関係が改善されれば良いのか。
そして改善点が見つかったなら、同僚など周りの人に協力を仰ぎながら、少しずつ改善してみましょう。

それでもどうしようもない場合は、転職を視野に入れてみるのも一つの手です。

全員が宇宙開発現場の人々のようにはなれないのですから、今自分にできる精一杯を貫くことが、モチベーションをコントロールする秘訣だと考えると良いでしょう。

 

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参照

[1]メインエンジンにトラブルが発生か、推力データに異常な変動が見つかるhttps://news.mynavi.jp/article/momo2-2/

[2] ”Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions” Ryan, Richard; Edward L. Deci (2000), Contemporary Educational Psychology. 25 (1): 54–67.

[3]宇宙へのパスポート 笹本祐一著 朝日ソノラマ P245-246、2002年

[4] “Work and the Nature of Man “ Frederick Herzberg (1966)「仕事と人間性動機づけ-衛生理論の新展開」北野利信訳 東洋経済新報社、1968年)

[5] “Intrinsic motivation” Edward L. Deci (1975), (「内発的動機づけ実験社会心理学的アプローチ」 安藤延男、石田梅男訳 真誠書房、1980年)